8.21の敗退&偵察のあと2度目の挑戦でやっつけてきました!

燕岳主稜線に詰め上げる沢「北燕沢」を遡行してきました。情報のない沢ということで前回は敗退&偵察に終わりました、今回はなんとか日帰りで抜けることができました。やや荒れた感じの渓相ではありますが、北アルプスの主稜線に突き上げる沢はスケールが大きく、立派な滝もたくさんありました。 |
山域 |
北アルプス 中房川 北燕沢左俣 |
山行日時 |
2010年9月4日(土) |
天気 |
晴れのちガス |
登山形態 |
沢登り |
装備 |
沢登り基本装備、30mロープ2本、ハンマー&ハーケン |
メンバー |
N川、塩G |
温泉 |
山のたこ平(500円) |
「地元の沢」シリーズ第2段の北燕沢。8月21日にチャレンジしたものの、入口の連瀑帯ではね返された。近いうちの再チャレンジを誓い、作戦を練る。作戦を練るとはいっても、入口の連瀑帯をどう抜けるかしか対策はなく、全行程の8割は出たとこ勝負となる。今回は時間切れで引き返すことにならないように、2日目を予備日に設定。最低の泊まり装備で臨んだ。
中房温泉(5:45)⇒入渓点(6:45〜10)⇒1つ目の屈曲点高巻き(7:45〜8:30)⇒2つ目の屈曲点高巻き(8:45〜9:30)⇒門のゴルジュ(10:40)⇒二俣(11:50)⇒水枯れ(13:30)⇒カール底(14:10〜50)⇒稜線登山道(15:20)⇒燕山荘(15:30〜16:20)⇒中房温泉(18:20) |
中房温泉に5時半頃着いたが、駐車スペースはすでに完売。中房温泉までの車道がかったるい。東沢乗越への道は、この2週間で3度目。前回はおとといのツメ偵察。いい加減飽き飽きだが、様子がわかっているぶん大高巻きの覚悟ができていて、精神的ダメージは小さい。前回は奥馬羅尾沢から本流に降りたが、今回は少し手前の降りやすい斜面から降りた。
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入渓点 中房川本流 |
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本流にかかる滝 1m+5m |
広河原を歩くとすぐに狭くなり、1m+5m+堰堤と続く。5mは左壁を登れそうだがモロいので、前回同様左から高巻いた。堰堤を越えるとすぐに北燕沢出合。出合いは貧相な感じ。しばらくゴーロだが、すぐに前方にすごい連瀑帯が見える。が、これは支沢の滝。本流は右に屈曲し、支流よりもさらに豪快な40mの滝をかけている。この滝の前に5m+3m+8mが控えている。前回は3mの滝まで登ったが、8mは試みるも登れなかった。結局は巻きになるので、今回は時間短縮のために一番下から巻くことに。
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北燕沢に入いると連瀑の始まり(写真は前回) |
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1つ目屈曲点にかかる40m滝(写真は前回) |
前回はこの高巻きで時間を食い、先の見通しが立たずに引き返した。ただ、極力沢通しに下り、しっかり地形を観察しながら下降。なので、今回はちゃんと頭の中で高巻きルートの絵ができている。左岸の草付きをガンガン登る。この草付きは傾斜があるけど、地面がしっとりとしているので、踏めばしっかり足場が決まってくれる。
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40m滝は草付きの高巻きから |
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この岩壁の弱点を突きトラバース開始 |
左の岩壁を見ながら登り、弱点をついて岩壁を越える。ここらがほぼ40m滝の落ち口の高さだが、この高さでトラバースしても大きなルンゼに阻まれるので、さらに高さを稼ぐ必要がある。同時に滝の上流までの距離も稼がなくてはいけない。極力小さく巻くように努力はするものの、かなりの高さを巻き上がることになる。河原が見えたところで下降開始。傾斜はあるけど、なんとか灌木を拾いながら懸垂なしで降りれた。この高巻きにざっと1時間を見込んでいたが、45分で終了。
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40m滝の上にある10m滝(今回はまとめて巻いた) |
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2つ目屈曲点にある20m滝 右のルンゼから巻く |
穏やかな河原はほんの数分で、左への屈曲点に20mの滝がかかる。左のルンゼから高巻き開始。前回の観察では低く巻けると目論んでいたが、意外とルンゼの傾斜はきつく、落ち口に向けてトラバースできない。結局は灌木が生えている高さまで登らされてしまう。予定では20m滝の落ち口に出て、続く10m2つはそれぞれ小さく巻くはずだったが、一気に巻いてしまうことになった。こちらの高巻きも所要時間45分。予定通りにはいかなかったが、時間的なロスはなかったと思う。
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20m滝の上にある10m滝(写真は前回) |
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8mCS滝 |
さて、ここから先は未知の世界。今のところ順調に進んでいるが、この先に出てくる物によっては再び敗退の可能性もある。かなり進んでから進退窮まると、戻るに戻れなくなることも・・・。そのために予備日を設け、時間的にも気持ち的にもゆとりがもてるようにしていた。高巻きから谷に戻って休憩したが、すでに上流には巨岩がつまるチョックストーン滝が見えている。遠目には登れるようには見えないが、とりあえず休憩するとしよう。
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先に登った塩G |
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巨岩滝2段15m 左壁ロープ使用 |
8mCS滝に近づく。近付くと、死角になっていた左側が登れそう。そして谷は大きく左カーブを描く。カーブの入り口には巨岩滝15m。ここは左の細い水流の脇を登る。悪かったので上からロープで確保。このあたり、もし登れない滝が出てきたら、側壁が高いので巻けば大巻きになる。手強い巨岩が連続するが、全身を使いながら力ずくで這い上がる場面多数。
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巨岩滝が続く |
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同左 |
巨岩滝ばかりなのだが、滝の高さを計るのが難しいところ。ひとまとめに15mとか記しているが、実際は数メートルがいくつかに分かれている場合も。大きな左カーブの出口には、右が大岩で左にチョックストーンを挟んで水流が2条に分かれる滝あり。左は不可能。塩Gが右の側壁に取り付くが厳しそう。やばいなあ・・・と思ったところ、洞窟状の奥に陽が差していた。小柄なN川さんが、この天窓のような小穴をくぐり抜ける。試しにボクもやってみると、ザックが引っかかりながらもなんとか通過。上からセミ中の塩Gを引っ張り上げる。
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巨岩滝 |
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門のゴルジュ 北燕沢再狭部 |
左カーブが終わり、緩やかなS字を描く。目の前には絶望的な狭いゴルジュが・・・。ゴルジュというよりも、両側に巨大な門柱の立つ、関所のような圧迫感のある光景。この中に登れない滝が潜んでいたら、1時間クラスの大高巻きになる予感。恐る恐る近付くと、門の中には滝はなく、大岩がスッポリはまっていて、大岩と側壁の間に中小の岩が詰まっていた。運よく中小の岩に突破口があった。最上部は突っ張りで越える。
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門のゴルジュ出口 |
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斜めにかかる5m滝 |
門のゴルジュを抜けると、谷はやや傾斜が緩む。地形図通りというか・・・。等高線は開いてはいるものの、Vの切れ込みは深い。岩盤が滝になっているところは少ないけど、相変わらず巨岩がVの谷に引っかかっていて、すんなりと進ませてはくれない。塩G得意の全身フリクションが大活躍。
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中流部の渓相 |
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巨岩中の巨岩! |
巨岩に苦労しつつも、そこそこ距離が稼げていた。そんなところに、久しぶりに滝っぽい滝出現。左下の8mCS滝。CSがなかったら登れるかもしれないが、CSが上からフタをしてしまって、ねずみ返しになっている。直登不能。右も左も巻きは可能か・・・?右は灌木の隙間から岩っぽいものが見えたので左に決めた。10分ほどで左からの枝沢に下降できた。ヨシヨシ。
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8mCS滝 左から高巻く |
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高巻き中に |
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5mナメ状滝 |
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同左 |
8mCS滝を越えると、さらに谷が穏やかになる。谷底まで太陽が差しこみ、とても明るい渓相になってきた。簡単に越せる小滝が点々と出てきて、北燕沢で最も快適な区間。このまま一気に最後まで快適に・・・と思ったけど、そうは問屋が卸してはくれなかった。二俣に到着。右俣は荒れてはいるが、見える範囲に難所はなさそうに見える。そんでもって左俣は・・・。
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やっと谷が穏やかになる |
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このあたりが一番快適だったかも・・・? |
今さらこんなのが出てくるの・・・?左俣は2段20mの滝で出合っていた。1段目と2段目の間で屈曲していて、「2段20mくの字滝」とでも言えようか・・・。1段目は両側壁スパッと立っていて、高巻きは考えられない雰囲気。2段目は右に屈曲する分、右岸に弱点がありそうだった。1段目は力ずくでも直登しなければいけないと思った。
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二俣入口にある2段20m滝 1段目はロープ使用 |
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2段目は右岸高巻き |
最初の2歩のスタンスがなく、塩Gに2歩分支えてもらう。その上はなんとか細かくつないで3分の2ほど登る。その先はいったん水流に降りないと抜けれなくなっていた。水流の部分は少し水平なところがあり、そこに降りたかったが1.5mくらいの段差。ツルっといったらオシマイ。ハーケンを打ってシュリンゲを垂らし、それにつかまりながら水流に降りた。同時にロープを出し、ハーケンに通しておく。ヌンチャク式にすると、振られて水流の方に行きそうだったので、本来ダメなんだろうけど、ハーケン直のカラビナに通しておく。水流におりたら抜けたも同然。支点はないので肩がらみでビレイ。
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2段目高巻き中 こいつもまとめて巻く |
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6段10m滝 |
2段目は左の草付きから巻くが、傾斜は緩いのにアリ地獄。草付きの下には岩盤があったのでした。そりゃスベルわ。何度か滑ったが、1m以内で自然停止してくれた。灌木にたどり着き一安心。落ち口を覗くが、すんなり降りられない。さらにツルツルの5m滝が続いていたので、まとめて巻いておいた。ここが中流部で核心だったかな。
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5m滝 右の水流脇を登る 登攀グレードはこの沢1番 |
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風化した花崗岩が浸食された感じ |
いくつか小滝を越すと、高さは5mくらいだが堰堤のような滝に出くわす。両側は草付きよりもややこしい砂付き。なんとか滝を登りたい。右側に斜上バンドがあって、そこに期待を込めて取り付く。下から見たらけっこうホールドがあるように見えたが、ホールドのように見えた凸は全て砂。雲を掴んだ感じ。これはイケる!と思った凸も力を入れたら砂に変わる。かなり度胸が要ったが、フリークライミングではあり得ないようなムーブ(?)で幸運にも登り切れた。ここはお助け使用。続いて6段10m滝。一見ゴーロ滝に見えるが、全て岩盤でできていた。これは無難に越す。
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雪渓は安定していて助かった |
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カール底に出ました |
奥の二俣の先は両サイド花崗岩が風化したザレで、谷には倒木が散乱する荒れた渓相に。難所はないのでサクサク前進。水が涸れる寸前になり水補給。しばらくで雪渓が出てきた。心配なく上を歩ける雪渓。サクサク進むようになると、太ももに負担が・・・。だいぶ疲れてきた。谷筋が細くなり、両側からのヤブがうるさくなりかけるところで、前方の視界が開け、カール底に飛び出る。カール底に出て視界が開けると同じように、これまでの圧迫感・緊張感から解き放たれた。この時点で初めて”もらった!”と思った。みんなも多分同じだろう。解き放たれたところで中休止。カールといっても未完成のようなカールで、これがかえって新鮮だったりした。40分もゆっくりしてしまった。
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カール底はお花畑 すでに終了間近 |
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カール底から燕岳山頂が |
太ももは悲鳴を上げかけているが(ボクだけ)、残るは最後のツメ。カールの中は背丈の高い草が生い茂っていて、そこを熊さんが通るもんだから、縦横無尽に道ができていた。糞もあちらこちらに・・・。草は身長よりもずっと高いので、視界が悪い。ガスで稜線も確認できにくい。できるだけ熊さんの通った道を利用しながら狙った方角を目指す。最後の力を振り絞り急斜面を這い上がると、通行止めの踏み跡に出た。ちょうど燕岳と燕山荘の最低コルだ。狙ったところとは少しずれていたが、結果的にはいいところに出た。
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燕山荘に到着 |
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9月に入りましたが賑わってます |
草のツメだったので、着ている服は黄緑に。ベースは泥。腰にはジャラジャラと金物類で、頭にはキズだらけのメット。登山道には今風のウェアで着飾った、今風の登山客がわんさか。浮いている・・・。浮いているだけに、浮浪者を見るような視線を浴びる。しかしまあ、サポートタイツ+短パンというスタイルがこうも多いとは・・・。既存の山ヤは完全に乗っ取られてしまった雰囲気だ。泥臭い登山のイメージが変わるのはいいことだけど・・・。
ビール!ビール!まずは乾杯!時間はすでに3時半。通常ならばゆっくりしていられない時間。早く下山しないといけない時間。だけど、そんなこと今はどーでもいー。途中で暗くなろうが何だろうが、今ここが心地よい。安堵感と達成感+疲労が心地よい。ビールのあとは、もと燕山荘従業員の塩Gのはからいでコーヒーを頂く。ゆっくり降りても2時間あれば降りれるでしょう。6時半、薄暗くなり始める頃に中房温泉に着いた。12時間超の山行でお腹いっぱいになりました。