五十沢川 下ノ滝沢 沢登り


上流部のナメはスゴイけど、下部の苦労は割に合うんだろうか・・・



 山域  越後 巻機山
 山行日時  2014年9月27日(土)〜28日(日)
 登山形態  沢登り
 メンバー  こーちゃん
1日目
五十沢キャンプ場 みやて小屋(8:05)⇒取水口(9:00)⇒五十沢川入渓点(10:20〜45)⇒下ノ滝沢出合(10:50)⇒下部ゴルジュ入口(11:35)⇒テン場(14:30)
2日目
テン場(6:50)⇒上部ゴルジュ入口(7:40)⇒高巻き終了(10:00〜15)⇒奥の二俣(11:45)⇒稜線(12:30〜55)⇒大窪沢渡渉点(14:50〜15:05)⇒水平道(16:15〜25)⇒みやて小屋(17:00)

素晴らしそうだけど大変そうなので、なかなか足が向かなかった五十沢川の下ノ滝沢。ガイドブック(上信越の谷105)には『骨の折れるアプローチ、下部ゴルジュ連瀑帯の相次ぐ高巻き、上部ゴルジュの絶妙なルートファインディング。それらの苦労が報われて余りある源流部のスラブ、ナメの連続…』とあります。確かに源流のスラブ、ナメは素晴らしいけど、下部の苦労がわりに合うかは微妙だなあ〜。これほど地獄と天国の差が激しい沢は初めてでした。

◇9月27日(土) 五十沢キャンプ場〜約1000mテン場  快晴!  

なかなか足が向かなかった五十沢川下ノ滝沢に足を向けるため、6月頃には同行のこーちゃんに連絡して、早々にこの日を予約。あとは天気だけ。1週間前の予報では土日とも晴れ。最近の週間予報はあっさり覆るけど、今週は堅そうな雰囲気です。今年は秋の気配が早く、あわよくば紅葉も楽しめてしまうかも…。5時に小布施でこーちゃんを拾い、六日町の五十沢キャンプ場へと向かいます。

五十沢キャンプ場に着くと沢の準備をしている人たちが…。下ノ滝沢以外に行く沢があるのかは知らないけど、かぶる可能性大だな。テン場あるかな?五十沢キャンプ場にはゲートがあって、9時になれば奥の『みやて小屋』まで車で入ることができます。キャンプ場入口から車道か山道を歩くと1時間くらいはかかる。でも、9時は遅すぎだ…。(後日ネットを見ると電話の受付が8:00〜になっているので、もしかしたら8:00に開くのかも)

 
みやて小屋 裏巻機渓谷

山道か車道かで悩んでいると、キャンプ場の受付に従業員の姿が。まだ8時前でしたがゲートを開けてくれました。ただ、入場料300円/1人が必要です。安いもんです。少し出発が遅れたのが幸いして、1時間楽できました。天気は晴れですが、巻機山には舐めるような雲がかかっています。そのうち取れるのかな。

みやて小屋から裏巻機渓谷の遊歩道を歩きます。約1時間先の取水口までは観光地です。観光地とはいっても絶壁をえぐり取った水平道で、黒部川の下ノ廊下の道を広くしたような感じです。遊歩道はアップダウンが少なくて歩きやすく、裏巻機渓谷の険しくて豪快な景色を堪能しながら観光気分で取水口まで。観光気分はここまででオシマイです。

 
下ノ廊下ばりのとこも 鎖に頼って堰堤を登ります
 
堰堤より このゴルジュを大高巻き 高巻き中

まずは取水口の堰堤を渡って対岸へ。これがまた大変で、1.5mの隙間をジャンプするか、鎖を利用して川まで降りて、また鎖を頼りに堰堤に戻るか。空身なら飛べるけど、重荷を背負っては微妙だな…。落ちたら痛いで済まないので、ここは鎖を利用して低巻きすることに。鎖がなければ登るのも降りるのも無理。腕力に頼って強引にクリアです。

いったいどこまで登り上げるんだろう…。地形図では200mだけど、もう50mは余分に登らされたような…。1日目は大変だけど時間的には余裕があるので、それなりに宴会物資を背負っています。登山道だから大丈夫だろうと甘くみていました。手も足もフルに使ってパンパンに、切れた息はなかなか戻りません。登りが一段落してやっとトラバースにかかります。高度感満点です!下りも鎖やロープに全面的に頼って五十沢川の本流に降り立ちました。もうヨレヨレです。

 
五十沢川本流に 下部ゴルジュのはじまり

やっと沢を歩けます。距離にして200mくらい本流を下ると下ノ滝沢出合。さっきの『超上級者』の登山道で疲れ果てました。足取りが重いです。なんだか気持ちも悪いです。大きなゴロゴロを越えていくのが大変です。大変ですけど下部ゴルジュを抜けるまでは頑張らなくてはいけません。時間に余裕があったのは幸いでした。

 
最初の高巻き 時々沢に戻れる

左右とも絶壁で水流が一条落ちる、まさに絵に描いたような滝が目の前に!いよいよ下部ゴルジュの始まり〜。ガイド本によれば40分の高巻きとあるので、高巻き前に水を補給しておきます。ゴルジュを見ながら左から巻きに入ります。ガイドに出てた小リッジを越えて灌木を頼りに沢に戻ります。所要時間は45分。ヨレヨレの身体には上出来かな。

沢に戻って感じの良いナメを歩くんですが、すぐに登れない滝に出くわします。今度は右から巻きます。ガイドは左になってるようですが、そのあたりは実際に遡行する人の感性と判断によるでしょう。どっちが楽かはわかりません。灌木のヤブを漕いだり、微妙な傾斜のスラブをトラバースしたりして沢に戻ります。

 
またまた高巻き 微妙なスラブのトラバース

さらに右からの高巻きとなります。なんか記憶がないというか、ゴチャゴチャになってよく覚えていません。沢に戻った時にゴルジュを抜けたという感覚がありました。単調に沢を歩いているよりも必死になって高巻きしてる方が疲れを感じませんでしたね。あとは快適なテン場をみつけるのみ。先客は下ノ滝沢には入ったようですが、明瞭な形跡があまり残されていません。かなりのツワモノかもしれんなあ…。

 
沢に戻るがまた通過不能 本日の宴会場

右に岩小屋があるとのことですが、ホントにコレか!というような岩小屋でした。2人が全身入って寝るのは厳しい感じ。さらに上流へ。贅沢言わなければ泊まれるところは何ヶ所もありました。結果的に一番快適そうなところをテン場にできました。疲れ果てましたが、なんとか酒と食材をここまで担ぎ上げることができました。

各自持ち寄った食材を小出しにして、ダラダラと宴会が進みます。肉焼いたり魚焼いたり野菜焼いたり…。今日は2人なので派手な宴会ではありませんが、焚き火を前に充実の時間が過ぎていきます。ビール→日本酒→焼酎とだんだんアルコール濃度を上げていきます。谷から見える狭い空ですが、星がたくさん見えています。全面天の川かと思うような…。いつの間にか岩にもたれてウトウト。どのくらい寝てたかわかりませんが、こーちゃんに起こされて寝床へと入ります。

◇9月28日(日) テン場〜割引岳〜五十沢キャンプ場  晴れのちくもり  

薄明るくなったところで目が覚めます。5時過ぎくらいだったかな…?寝袋に入ってイチコロで眠りに落ち、朝まで一度も目を覚ますことなく寝続けました。暑くも寒くもなくて快眠です。昨日の疲れが取れていればいいんですが…。焚き火を点けてます。今日は時間が読めないというか、早い時間には降りれないはず。あまりのんびりはできません。雑炊食って出発です。

 
最初は巨岩帯 だんだんと滝っぽくなり・・・

両岸開けた巨岩帯を歩きますが、正面に衝立のようなスラブが近づいてきます。近付くにつれて巨岩から岩盤になってきて、ガイドにある『石畳』が出現。水が流れていないところは泊まれそうです。硬そうですけど…。天気は昨日の方が良かったのかなあ、ちょっと雲が出ています。天気予報は聞けてないけど、昨日の予報を信じましょう。

 
石畳 上部ゴルジュのはじまり〜

石畳に続いてナメ滝が続きます。最初のは登れますが、だんだんと立ってきて高巻きの雰囲気に。いったん高巻きに入ると大高巻きになりそうなので、沢に戻って休憩がてら水を補給しておきます。高巻きのはじめは右か左か迷うところですが、ガイドは左からの大高巻きとなっているので従います。

 
ここから高巻きだったっけか・・・ 再峡部かな

最初は沢に近いところを巻きますが、そのうち高く巻き上げることに。遥か遠くに100mの滝とその上の40mのナメ滝が見えています。あそこまで一気に巻くのか…。気が遠くなりそうです。所要時間は2時間ですからね〜。笹に灌木にシャクナゲまで混じってきて、昨日の下部ゴルジュの高巻きよりヤブ漕ぎ濃度がアップ。なかなか大変なことになってきました。


高巻き中に100m滝とその上の40mナメ滝  右岸のスラブがスゴイ!

時々開ける場所があり、沢の様子を確認しながら進みます。尾根状を進んでいたのですが、斜面を低く巻けそうにも見えました。でも安パイということで尾根をそのまま進みます。100m滝の落ち口と同じ高さになったあたりで尾根から降りてみます。下流を見ると緩い草付きになっているところが多いような…。早めに降りてみても良かったかもしれません。


やっと高巻きも終わりに・・・


右岸のスラブ

100m滝の落ち口に近付くにつれて傾斜が増し、手強い灌木の薮トラバースに。高巻き&ヤブ漕ぎの終わりが見えてきて、最後の力を振り絞って灌木と格闘。大滝の落ち口あたりに出合う右岸からの支流に出ました。本流に降り立つにはもう一仕事ありましたが、水にあり付けたということで休憩。40mナメ滝が圧巻です。あー疲れた。


40mナメ滝


40mナメ滝上部

本流に戻るには右岸からの主流を2本横切って、40mナメ滝の落ち口まで灌木とのコンタクトラインをトラバースします。本流に戻ったところで上流を見ると、思わず『ウワ〜ッ!』と声が出てしまう驚愕のナメ&スラブが…。これはスゴイです!紅葉も始まっていて、しかも青空で、スゴイ景色に拍車がかかります。


これが圧巻の景色です!


素晴らしいスラブとナメです

コレがなければ下ノ滝沢を登る人なんていないでしょうね。長い長い辛い時間を耐えた者だけがありつけるこのロケーション。頑張った甲斐があったってもんです。これで天気悪かったらガッカリです。今日は天気に恵まれて良かったです。天気イマイチだったら、やり直さなければいけないとこでした。


フリクションがギリギリの傾斜


苦労して登ってきたのが報われます

素晴らしいんですが、コレが下流部の苦労に見合うのかと考えると、微妙なところですね。良かったからまた行きたい!とストレートには思えないですもん。巻機山に詰め上げる沢は上流はナメ天国で、目ぼしいところが全て終わって2回目を考える感じ。米子沢は既に4回登ってるし、ブサの裏沢はまた行きたいと思う。まだ行ってない金山沢もあるし。ただ、ナメとスラブの凄さはここ下ノ滝沢がピカイチです。


紅葉もロケーションに花を添えます


大スラブ帯の締めくくり

ナメ&スラブのロケーションに酔いながら遡行しますが、始め頃は傾斜がきついナメ滝が続きます。フリクションが効くギリギリの斜度と滑り具合いです。今回この沢に備えてゴム底で臨みましたが、乾いた岩と水流の中の岩はフリクション抜群!ですね。水流際のヌメった岩にはめっぽう弱い…。その辺の特徴を飲み込んで使えば強力な武器となりそうです。沢によってフェルトと使い分けるのが利口ですね。


人間の小ささでスケールがわかります


締めくくりの滝を横から


スゴイ!としか言いようナシ


締めくくりの滝を越えると源頭の雰囲気に

ガイドブックの遡行図を見ると、下ノ滝沢の源流部は千手観音のように枝沢が分かれています。テキトーに書かれているのかと思いきや、地形図と照合してみるとちゃんと合致しています。せっかくなので遡行図通りに辿ります。最後の最後で時間短縮のために右に逃げ、割引岳寄りの稜線に登り上げました。ホントに短縮したければ、大ナメが終わって1600mくらいのところの枝沢を右に入れば、簡単に登山道に出ることができます。下山してる時、すぐそこに見えましたんで。


ナメはまだまだ続きます


振り返ってもナメ・・・


進行方向に太陽があるのがちょっとだけ残念


源流部は癒し渓ですね

稜線に出て、あえて残しておいたビールを開けます。下ノ滝沢は労が多いぶん達成感は大きいですが、もう勘弁して下さい…だな。先週も同じことを思ったような。中央アルプスの安平路山‐越百山のヤブ区間。達成感は大きいけど、二度と歩きたくない…。2週続けてMっぽい山行きとなりました。もし、どちらかに登らないといけないとなると、中アよりも下ノ滝沢かな!
 
奥の二俣かな  牛ヶ岳方面へ 最後の滝かな

達成感に浸っているヒマはないんです。下山しなくては!この下山がまた大変なのであります。コースタイムは6時間。キャンプ場のゲートは18時で閉まります。開けといてくれるという話ですが、できれば18時に間に合わせたいところ。18時というのはゲートが閉まる時間でもあり、暗くなる時間でもあります。『超上級者コース』だけに、ナイターは避けたいところです。

 
稜線に到着! まずは割引岳へ
 
新道コースへ 草紅葉もなかなか

五十沢キャンプ場から巻機山へは2本の登山道があります。東側の牛ヶ岳に登るのが旧道、西側の割引岳に登るのが新道。これから下るのが新道です。古いより新しい方が道がいいのかな。割引岳から一気下りです。笹はほぼ完璧に刈り払ってあります。急で大変ではありますが、これならコースタイムを短縮できそう。下るにつれ泥混じりとなり滑ること滑ること!下ほどペースダウンしたけど1時間半ほどで大窪沢の渡渉点。

 
右手に遡行した下ノ滝沢 紅葉と金城山

裏巻機から巻機山なんて年間何人の人が登るんだろう…?多分数えるほどじゃないかなあ…?それなのに新道と旧道と2本の登山道があり、しかもきっちりと刈り払われ整備されています。普通は2本も要らないと思うけど、何かワケがあるんでしょうね〜。

大窪沢の渡渉点がこれまたいいとこ。ここで泊まりたい!って感じのとこでした。小休止を入れて登りに備えます。そうなんです…これから大高巻きなのであります。往きの地獄の高巻きの対岸に当たります。地形図では斜めに登っていってるので、往きのようなことはないと信じたいです。ただ、高巻きとしては標高差も距離も新道の方がスペックは大きいです。

 
大窪沢渡渉点 高巻き中に

旧道のような垂直とも思える登りはありません。ほぼ足だけで登っていけます。登りの標高差は150mほど。試練になるかと思ってましたが、意外と楽に登っていけました。長くトラバースして下りにかかります。下りの標高差は350mもあります。登りの筋肉よりも下りの筋肉の方が疲れてる感じで、最後の方は疲れました。

水平道に出たところがちょうど小滝沢を渡るところ。地形図と少し違いました。時間は16時20分。あとは水平道をテクテクと歩くのみ。あと1時間もあればみやて小屋に着くでしょう。…と思っていたら、水平道は思ったより登り加減で疲れました。それにしても、ここまで車が入れて助かりました。入れなければあと数キロ歩かなければいけないのですから!

五十沢温泉に入り、六日町でラーメンを食べて帰りました。22時前に安曇野着でした。





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