山登りのページTOP 山行記録 山スキーのページ 沢登りのページ 北アルプス全山縦走 南アルプス全山縦走 リンク PLOFILE


南アルプス全山縦走 その1

(1997年7月28日〜8月7日)


夜叉神峠から入山し、鳳凰三山、早川尾根、甲斐駒ヶ岳、仙丈岳、三峰岳、塩見岳、荒川岳と歩いたけど、悪天で装備がやられ、台風接近という情報にシッポを巻いて11日で下山しました。


■7月28日(月)   夜叉神峠口⇒南御室小屋   くもり時々小雨

夜叉神峠口(6:08発)⇒夜叉神峠(7:36〜55)⇒杖立峠(9:53〜10:10)⇒苺平(12:11〜29)⇒南御室小屋(13:10着)

会社の同僚に縦走中車を貸すかわりに、夜叉神峠口まで送迎してもらう。広河原方面は台風の影響か、落石のため通行止めになっていた。その影響か駐車場は平日とは思えないほどの混雑。天気は雨。準備がはかどらない。というか、おっくうでダラダラしていた。しょっぱなからカッパを着るというのはせつなすぎる。

いよいよ出発だ。一歩山に踏み込めば、もうしばらくは山に入りっぱなしだ。期待と不安と緊張感が交錯していた。車道から登山道への階段、荷物がズッシリとくる。足のほうはそれほどでもないが、背中にかかる重みが半端ではない。荷物の重さは約38キロ。こんなのでこの先歩いて行けるのか不安になった。足は歩いているうちにだんだん重さに慣れてきたが、肩と背中は苦痛が増す一方だった。

夜叉神峠小屋のベンチに座って休む。ザックを下ろすと背負う時大変なので、背負ったままベンチに座って休んだ。峠からは少し下って、そのあとは足元の悪い登りになる。ずっとこんな調子だったらイヤになるが、しばらくで尾根の西側につけられた適当な斜度の道が続くようになる。先生+高校生3人のグループと抜きつ抜かれつで進んでいた。

とにかく長いこと歩くことができず、30分に1回のペースで休憩していた。今日はコースタイムで6時間弱の行程なので、何回休憩してでもとにかく南御室小屋まで辿り着ければよい。苺平は名前とはうらはら、暗く湿っぽいところだ。天気のせいもあるかもしれないが・・・。苺平からは車が通れるのではないかというほどの広い道。下りは肩にズシズシとくるが、しばらくで南御室小屋に到着。

テントの受付の時、「どこまで行きますか?」と聞かれた。光までと言うのは照れ臭かったので、「行けるところまで・・・」と言っておいた。しばらく止んでいた雨が、また降り出してきた。テントは広いスペースの方が快適そうだったが、一人なので遠慮して木の中に張った。風が治り切らないうちに出てきたのだが、ノドが痛く、また節々がしびれるところをみると、まだ熱があるみたいな感じだ。



■7月29日(火)   南御室小屋⇒早川尾根小屋   くもり時々小雨

南御室小屋(7:47発)⇒薬師岳(9:34〜44)⇒観音岳(10:13〜24)⇒アカヌケ沢の頭(地蔵岳往復11:45〜13:00)⇒高嶺(13:50〜14:14)⇒白鳳峠(15:02〜13)⇒広河原峠(16:20)⇒早川尾根小屋(17:10着)

目覚ましは4時に鳴ったが、雨の音が聞こえているし、早川尾根小屋までなら楽勝だろうという甘い考えから、ちゃんと起きたのは6時頃。前日の疲れもあったかもしれない。この寝坊があとで響くことになる。

小屋の裏手の急登を登り、汗ダラダラに。森林限界に突入すると風が吹きさらしで、かいた汗が冷えて、さっきまでの暑さが信じられないくらいだ。晴れていれば白峰三山の眺めが最高のはずなのに・・・、ガスで真っ白けだ。砂払岳から少し下った樹林帯に、薬師岳小屋はあった。ザックを背負ったままベンチに座ると、ベンチごと倒れてしまい、復旧が大変だった。

薬師岳、観音岳と晴れていれば気持ちの良さそうな稜線が続く。観音岳で初めて写真撮影。なにしろ景色がないので、看板しか写すものがない。観音岳からは結構な下りとなる。鳳凰小屋分岐で雨となり、カッパを着ておく。アカヌケ沢の頭までの登り返しがきつかった。

すでに12時前。このぶんだと早川尾根小屋にはかなり遅い時間になりそうだ。寝坊を後悔。しかし、地蔵岳をパスするわけにはいかないだろう。ザックを置いて空身でピストン。空身だと体が宙に浮いたような感じだ。オベリスクにはロープがたらしてあったが、切れそうな感じだったのでやめ。

鳳凰小屋に泊まりたい気持ちが大きくなってきたが、高校生グループが早川尾根小屋まで行くというので、ボクも頑張ることに。しかし、ここからは高嶺、赤薙沢の頭、最後の小屋への登りとアップダウンが激しい。腹は減っているはずだが、食べ物がノドを通らない。水で流し込んで無理矢理食べていたが、水も底をついてきた。広河原峠には巨大なカエルがいた。ウ〜気持ち悪い・・・。頼むからヘビは出てこないでくれと祈りながら歩いていた。

早川尾根小屋に着いた時には5時を回っていた。明日からはちゃんと早起きしないと・・・。テン場には3張りしかテンがない。南御室小屋とはえらい違いだ。マイナーな山域だと実感。節々の痛さはなくなってきたが、ノドが腫れていて、ツバを飲み込むのも痛い。


■7月30日(水)   早川尾根小屋⇒北沢峠   くもり

早川尾根小屋(5:42発)⇒ミヨシの頭(7:54〜8:02)⇒アサヨ峰(8:58〜9:40)⇒栗沢山(10:52〜12:33)⇒北沢峠(14:00着)

昨日の反省から、今日はちゃんと4時には起きた。天気は今日もくもり空だが、今のところ雨は降っていない。近くに張っていたテントの人は九州から来たという単独のおばちゃん。そのおばちゃんに数分遅れで出発。今日もガスが巻いているが、きのうまでとは違って太陽の気配が時々感じられる。そのガスが着れた時に、仙丈が見えた。そのあと北岳の山頂部分の三角錐も姿を現した。今回初めて看板以外のものを撮った。仙丈、北岳とも、見えたのはこれっきりだった。

ミヨシの頭を越えるとアサヨ峰への大登。山頂は遥か上のほうだ。山頂には九州のおばちゃんが座っているのが見えた。数分遅れで出発したのに、もうあんなところまで登っているとは・・・。おばちゃんが早いのか、ボクが遅いのか・・・。それからアサヨ峰までは30分以上かかったが、九州のおばちゃんはまだ山頂にいた。しばらく話をしていた。下には高校生グループがこっちに向かって登ってきているのが見える。

アサヨ峰から栗沢山の間は久しぶりに森林限界上の気持ちのよい稜線歩き。天気がよい時にまた来てみたいものだ。栗沢山とアサヨ峰は1つの山みたいになっていて、東側のピークが最高峰のアサヨ峰、西側のピークが栗沢山という形になっている。

栗沢山では九州のおばちゃん、埼玉からのおじさん2人がいた。ここからの甲斐駒が見たくて、4人とも長居を決め込んでいた。九州のおばちゃんにみかんをもらったり、埼玉のおじさんには急須で入れたお茶ももらったりした。そのあと高校生グループも登ってきて、話に加わる。高校生は明日甲斐駒を越えて、あさって黒戸尾根を下山するらしい。肝心の甲斐駒のほうは、双児山から駒津峰にかけては何度か見えたが、本体は1時間半粘ったがとうとう姿を現さなかった。高校生、九州のおばちゃん、埼玉のおじさんたちと下りだし、あきらめてボクも出ることに。

ここから北沢峠までの道のり、急坂で大変だったが、今回で初めてコースタイムをクリアーすることができた。コースタイムが甘かったのかもしれないが・・・。北沢峠はテントの花が咲いていた。良い場所は遠いところにしか残ってなかったので、九州のおばちゃんのとなりに張らせてもらうことにした。隣りには埼玉のおじさんたちがいた。夕食は賑やかで、埼玉のおじさんからウイスキーやワインをもらったりした。今日は余裕のある行程で、人とたくさんしゃべれて楽しかった。明日はサブザックでの甲斐駒ピストンなので、メチャクチャ気が楽だ。


■7月31日(木)   北沢峠⇒甲斐駒ケ岳⇒北沢峠   晴れ時々くもり

北沢峠(5:45発)⇒仙水小屋(6:08)⇒仙水峠(6:31〜38)⇒駒津峰(7:37〜57)⇒甲斐駒ケ岳(8:55〜11:27)⇒摩利支天(11:49)⇒駒津峰(12:30〜42)⇒双児山(13:04〜24)⇒北沢峠(14:39着)


川のほとりを軽快に歩いていくが、堰堤の度に軽い登り下りがあってうっとおしい。でも、今日はサブザックで荷物が軽いのでどうってことはない。仙水小屋では出発準備をしている団体さんがいたので、この人たちが出る前にと、休まずに歩いた。その甲斐なく、すぐに別の大群につかまる。ザックが軽い時くらいかっ飛ばしたかったが、全くよけてくれそうな気配はない。そのうち花があったみたいで、全員がピタッと道の真ん中で止まってしまった。最後尾の人は僕に気付いているはずなのに・・・。

仙水峠からの摩利支天は大迫力だ。ここから駒津峰までは標高差500mの登り。荷物が軽いと息は切れても、足はどんどん進んでくれるのでうれしい。しかし、登っていくにつれて、少しずつガスが多くなってきた。駒津峰までギリギリ1時間を切った。

駒津峰ではたくさんの人が休憩していた。九州のおばちゃんや埼玉のおじさんもいた。埼玉のおじさんには小屋の弁当のエビフライをもらった。ガスは甲斐駒山頂を覆っていて、出そうになるがなかなか姿を現してくれない。甲斐駒へは直登コースで登った。

山頂は残念ながらガスで真っ白け。すぐにはなくなりそうもない。でも、早く降りても仕方ないので、予定通り長居を決め込む。山頂では話し相手が入れ替わり立ち替わり変わった。千葉からの老夫婦、埼玉2人組、そして3人組・・・。九州のおばちゃんはずっといた。高校生も登ってきた。高校生は七丈小屋に向かうので、メインザックを背負って登ってきていた。2時間半山頂にいたことになるが、結局一度もガスは晴れなかった。でもたくさんしゃべって楽しい山頂だった。

せっかくなので摩利支天に寄る。誰もいなかった。仏像とかがたくさんあって、ガスの演出もあったりで、ちょっと不気味なところだった。摩利支天ごと崩れ落ちたらどうしよう、とか思ったりもした。下りはところどころで渋滞に捕まったりしたが、九州のおばちゃんや埼玉のおじさんらと一緒に下ったので、楽しい下山だった。

すでにテントが張ってあるというのはうれしい。今日も夕食は九州のおばちゃんや埼玉のおじさんと一緒。酒も進んでしまった。明日はまたメインザックを背負っての行動だ。ここまで仲良くなった人たちは、みんな仙丈のピストンで下山してしまう。ここまで苦しいながらも楽しく歩けたのは、この人たちのおかげだと思った。


■8月1日(金)   北沢峠⇒仙丈ヶ岳   晴れのちくもり

北沢峠(5:43発)⇒四合目(7:08〜7:32)⇒小仙丈(9:05〜20)⇒仙丈のテン場(10:37着)


今日は仙丈のテン場までという楽勝な行程。ちょっと軟弱すぎるかなあ・・・。朝から快晴。九州のおばちゃん、埼玉のおじさんはすでに出発済み。ゆっくりしていたが、そうゆっくりもできないのでボクも出発。少し荷物が減ったからか、体が重荷になじんできたのか、きつい中にも余裕が出てきた。

森林限界を越えると、北岳、富士山、そして3日間ほとんど展望なしで歩いた鳳凰三山から早川尾根が望めた。小仙丈に着くと、北岳以南の山々も見えてきた。ただ、塩見よりも南は雲の中だった。明日歩く予定の仙塩尾根も見えている。かなり下ったあと、三峰岳に向けてグッと登っている。明日はハードになりそうだ。

山頂と小屋との分岐の少し手前で、九州のおばちゃんが降りてきた。これで九州のおばちゃんとはお別れだ。本当にお世話になりました。埼玉のおじさんたちとは会うことができなかった。この頃にはもうガスが上がってきて、展望はなくなってしまった。

テン場にはまだテントはなかった。まだ11時にもなってないので当たり前か・・・。きのう激しい夕立があったという話を聞いていたので、上目のスペースを選んだ。山頂に行こうと思っていたが、天気が良くないので地図を広げて今後の計画を練ったり、食糧の整理をしたり、昼寝をしたりして時間をつぶした。

4時頃に夕食を食べ、そのあと山頂に向かった。ボクが山頂に登るのと同時に、反対側から外人さん2人組が登ってきた。写真を撮り合ったり、話をしているうちに、この2人は山ケイに出ていた、百名山を早駆け踏破中のニュージーランド人だとわかった。仙丈が97山目で、これから降りて甲斐駒に登るという。「ナイトクライミング・・・」とか言っていた。2人が出たあともしばらく粘っていた。すると少しの間だけ白峰三山が姿を見せてくれた。午前中の白峰三山は、逆光になって黒っぽいが、夕方は日が当たって白くはっきりと見えていた。


■8月2日(土)   仙丈ヶ岳⇒熊ノ平   晴れのちくもり

テン場(4:45発)⇒仙丈ヶ岳(5:10〜22)⇒大仙丈(5:52〜6:02)⇒伊那荒倉岳(8:14〜20)⇒独標(8:58)⇒野呂川越(10:10〜33)⇒三峰岳(14:07〜25)⇒三国平(15:00〜07)⇒熊ノ平(15:30着)

今日は長丁場なので早起き。風がえらい強い。外に出てみると、星がたくさん出ていてきれいだった。テントを撤収している時に槍・穂高が見えた。仙丈への登りは空身で登ったきのうとは違い、荷物が重いのでちょっと疲れた。山頂は賑やかだった。南は赤石だけまで見えいた。槍・穂高はすでに見えない。白峰三山は逆光で黒かった。やはり見るなら白く見える午後が良いだろう。

高校生の大群が押し寄せてきたので、大仙丈へと歩き出す。さっきまでの人の多さがウソのように、こちら側は閑古鳥が鳴いている。大仙丈はすでにガスの中だった。大仙丈からの下りはカールの中を歩く快適な道。ガスさえなければ、もっと気持ちが良いだろうに・・・。花も結構咲いていた。

樹林帯に入ると倒木が目立ち始める。上を越えるか下をくぐるか微妙なヤツは、ザックが重くて結構苦労した。伊那荒倉岳を下ると高望池があり、テントを晴れそうなスペースもあった。少し下ると水場もある。わかっていれば、きのうここまで来ていたのに・・・。野呂側越には両俣に下る人と、熊ノ平まで行く人の2人がいた。ここでこの先の登りに備えて、少し長めに休んでおく。腹ごしらえもしっかりとしておいた。

気合いを入れて歩き始めるが、はじめのうちはダラダラ登り。三峰岳に近づくと岩峰がたくさん出てきて、その登りがとても急。越えて平坦になったらまた岩峰の超急登、そして平でまた岩峰の超急登・・・・という連続。岩峰を登り切る度に休憩していたような・・・。最後はフラフラになりながら三峰岳に登りついた。

三峰岳から先は様相ががらりと変わって伸びやかとなる。少し下ると広い台地状、そして下ると台地状の連続に。最後の台地が三国平だった。広いハイマツの台地の先に農鳥岳がカッコ良くそびえていた。熊ノ平小屋からの農鳥岳も最高にきれいだった。



■8月3日(日)   熊ノ平⇒雪投沢⇒蝙蝠岳⇒雪投沢   晴れ

熊ノ平(6:20発)⇒安倍荒倉岳(6:56〜7:01)⇒小岩峰(7:42〜8:04)⇒雪投沢(10:42〜11:42)⇒北俣岳分岐(12:14)⇒蝙蝠岳(13:30〜50)⇒北俣岳分岐(15:07)⇒雪投沢(15:30着)

今日も快晴。左手に西農鳥岳を見ながらの歩き。登山道は稜線の東側を巻くようについている。安倍荒倉岳もピークは通っておらず、西に20mくらい上がったとことに山頂があった。樹林帯で展望のない、どうでもいいような山頂だった。それに対して小岩峰は、地図にも「好眺望」とあるように、素晴らしい景色が待っていた。とくに急接近してきた塩見が見ごたえがある。そして、きのうまでいた仙丈があんなに遠くなってしまった。

これまで傾斜の緩い道だったが、北荒川岳の登りはかなりきつかった。長くはないが、ジグザグの切ってない道なので、アキレス腱に響いた。ハイマツ帯になったと思ったら、ヒョッコリと山頂に出た。山頂からの塩見はもう、谷ひとつ隔てるだけとなり、大迫力で迫ってきている。

雪投沢はハイマツ帯の中にあるテン場で、稜線から吹き降ろす風がかなり強い。テントを張って、腹ごしらえをして、サブザックで蝙蝠岳ピストンに向かう。北俣岳から蝙蝠岳の間は広くて太いなだらかな尾根。歩いていて気持ちが良かった。ただ、ところどころハイマツの勢いが強い部分があって、短パンで歩いていた足にはちょっとつらかった。コルのみ潅木帯で、船窪状になっていた。この前後には結構なお花畑もあった。

蝙蝠岳は主稜線から少し飛び出した位置にあり、まわりを南アルプスの主要な山に囲まれている。それだけに展望はピカイチ。南アルプスの中でも屈指の好展望なのではないか。また良いことに、今日は午後になってもガスが上がってこない。これからもずっとこんな天気が続いてくれたらなあ・・・。

雪投沢のテン場に戻り、水を汲みにいく。下っているとダケカンバの林になり、その中にもテントスペースがあった。こっちは風もなく快適そうで、雰囲気も良かったこっちにしたほうがよかった・・・。水場ではタオルを濡らして、全身拭いた。冷たくて爽快だった。


■8月4日(月)   雪投沢⇒塩見岳⇒三伏峠   晴れ

雪投沢(5:56発)⇒北俣岳分岐(6:46〜7:05)⇒塩見岳東峰(7:40)⇒塩見岳西峰(8:33〜9:22)⇒塩見小屋(10:08〜20)⇒本谷山(12:02〜22)⇒テン場(13:00着)

夜中は風が強く、テントの壁が顔に当たって来たりして、何度も目が覚めた。起きた時はガスっており、風も依然として強かったので、外に出る気がしなかった。まあ、今日は三伏峠までなので、そう急ぐ必要なないだろう。北俣岳まできのうサブザックで30分で登ったが、メインザックを背負うと50分かかった。

塩見に登るにつれてガスが徐々に薄くなり、山頂に着いたとたん、今まであったガスが全部なくなった。全く良いタイミングで登ってきたもんだ。北は甲斐駒から、南は今回はじめて赤石岳以南の山々もお目見え。大沢岳、兎岳あたりが確認できた。聖より南はまだ見えてこない。

このままだと早い時間に三伏峠に着きそうなので、山頂で粘ることにする。東峰で40分くらいいて、今度は西峰に移動。大分から来たというおばちゃんにみかんをもらった。いくら眺めが良いといっても、そうそう1ヶ所で時間をつぶしてはいられないので、三伏峠に向けて下り始める。

山頂からの下りでは、何ヶ所か狭い岩場があった。大きなザックだととても歩きにくかった。塩見小屋で少し休む。ここからの塩見は圧巻。また、きのう歩いた熊ノ平から北荒川あたりの稜線も見渡せた。あとは三伏峠まで下るという気持ちでいたので、本谷山の登りは意外と疲れた。途中から沢小屋へのトラバース道に入った。あまり人が歩かないのか、樹林が茂っていて歩きにくかった。

テントを張ったあと、峠の小屋の方へ遊びに行った。上のテン場は広いスペースがあり、学生パーティーがいたりしてにぎやかだった。ビールを調達してテントに戻る。水場に行くと光岳まで行く予定の人がいた。話をしていると、今台風が沖縄に向かっているということだ。光岳までの予定をやめて、荒川小屋から椹島に降りるらしい。変な情報を聞いてしまったもんだ・・・。



■8月5日(火)   三伏峠⇒高山裏⇒荒川小屋   風雨

テン場(5:17発)⇒烏帽子岳(6:02〜07)⇒小河内岳(7:15)⇒板屋岳(9:00〜20)⇒高山裏(9:52)⇒中岳分岐(12:45)⇒荒川小屋(13:30着)

夜中はたまに雨が降っていたみたいだが、起きた今は上がっている。まだ真っ暗だったが、天気がよくないことはわかった。風もかなりの勢いで吹いている。今日は荒川小屋まで行きたいところだが、天気によっては高山裏とまりになるかもしれない。

沢小屋から稜線までは結構な登り。でも、荷物はだいぶ軽くなり、体力もついてきたのか、足取りもだいぶ軽くなってきている。稜線に出ると西からのすごい風。稜線の西側は崩落していて、もし東からの風だったら恐かっただろうなあ・・・。ただ、たまに風がピタッとやんだ時には、おっとっと・・・とガレの方に体が傾いてしまう。

小河内岳を下るまでは強風の中の稜線歩きだ。晴れていたら最高に眺めの良い稜線歩きになるはずだが、今日は早く樹林帯に入りたくて仕方がなかった。そのうち雨も降り出してきた。ザックカバーは風で飛ばされそうだったので、ザック本体に結び付けておいた。雨・風ともに強まり、またガスで視界も乏しかったので、どこをどれだけ歩いたのか感覚が麻痺していた。

やっとという感じで樹林帯に入る。やはり風がなくて快適だ。木の上の方は風に大きくあおられている。ホッとしたのも束の間、ザックカバーがないことに気付く。飛ばされないように結んでおいたのだが、そのヒモごと引きちぎられていた。吹きさらしの稜線では休憩しようがなかったが、穏やかな板屋岳で久しぶりの休憩。

高山裏には10時前には着き、いくら天気が良くないとは言え、ここでやめるわけにはいかないので、荒川小屋を目指す。樹林帯のトラバース気味の道を歩いている間はよかったが、潅木帯となり、カールの底に出たあたりからは、雨は叩きつけるような勢いになってきた。

中間くらいまで登ったところだろうか、下を向いて歩いていたら突然地面が白く光った。雷だ・・・。戻るにしては距離があるし、進むとしたら雷の中の稜線歩きだ。どっちも勘弁だ・・・。先を歩く人も、あとから追ってくる人も、すれ違う人もいない。これまで経験したことのない孤独感だった。

やっとの思いで稜線に登りつき、雷来るな!と祈りながら中岳方面へ。荒川小屋への下降点まではたいした距離ではないが、これが今日はことのほか長く感じた。荒川小屋に向けての下りはホッとしたのか、ユルユルになった地盤に足を取られて、ゴロゴロとこけて一回転半してしまった。小屋までの道のりも長く感じたが、タイム的にはかなりのハイペースだ。今日一日通して、かなりハイペースで歩いていたと思う。休憩する気になれん天気だったからなあ・・・。

雨の中の惨めなテント設営。全身ビショビショだったので、テントに入ってからはすぐに火をたき、湯を沸かし、スープを飲んだ。そのあとも熱燗を飲んだり、FDのカレーピラフを作ったり、とにかく常に火を焚いていたような・・・。そして、常になにか食べていたような・・・。着ていた服が濡れたのは仕方ないが、ザックの中の濡れて欲しくないものまで濡れていたのはショックだった。ザックカバーが飛ばされたのと、ザックの中での防水が甘かったからだ。小屋に泊まって体制を立て直したほうが良かったかもしれない。


■8月6日(水)   荒川小屋⇒悪沢岳⇒二軒小屋   くもり

荒川小屋(8:00発)⇒中岳コル(9:07〜12)⇒悪沢岳(10:22)⇒千枚岳(11:15〜50)⇒万斧沢の頭(12:46〜13:03)⇒二軒小屋(15:00着)

天気は悪いし、行ったとしてもどうせ百間ホ洞までなので、5時まで寝ていた。天気予報では、台風は週末にかけて関東に大荒れの天気をもたらしそうな感じだった。今日の後半から明日にかけても、ぐずついた天気が続くと言っている。

なんだか下山モードになってきた。きのうのような惨めな思いを、まだ何日もするのかと思うと、もう降りてしまったほうが良いと思えてきた。百間洞に行ってしまうと、下山に苦労するので、下山するなら今日だろうなあ・・・。椹島への下山を考えていたが、リムジンに乗って静岡に出ても、そこから松本まで帰るのが大変になる。そこで、二軒小屋に降りて、翌日転付を越えてバスで身延に出ることにした。こっちのほうが早く松本に帰れそうだ。

きのう必死で下った道をまた登り返す。今のところ天気はそう悪くない。かなりのむなしさを感じながらの下山である。登りは気が入ってないためか、かなりきつかった。中岳からはガスの中となる。下山する以上は天気が悪くなってくれたほうが気が収まる。

今回の山行での最高峰は悪沢岳。下山する日に踏むというのも皮肉なもんだ。ここはガスが巻いており、風も強かったので素通り。千枚岳まで降りるとガスがなくなったので、ここでゆっくり休憩した。ここからはダラダラ下りで、小さなピークを何回か越す。その最後のピークが万斧沢の頭だ。この頃には晴れ間も出るようになってきた。ただ、高い山にはガスがまとわりついていた。ここから急降下で二軒小屋まで下る。

二軒小屋でテントの受付をする時に、バスの時間も確認しておいた。バスは10:09で、そのあとはだいぶ時間が空いている。相当早くここを出ないと間に合わないだろう。テントを張ろうと思ったら雨が降ってきた。テントを張るにはうっとおしい雨だが、下山してきた以上は降ってくれたほうが気が済む。夕飯は今日が最後なので、少しでも荷を減らそうと、2日分食べておいた。


■8月7日(水)   二軒小屋⇒転付峠⇒新倉   くもり時々晴れ

今日は3時起きの4時出発の予定。しかし、なんだかんだで出たのは4時半すぎ。最終日がこの山行で一番早い出発というのも皮肉だ。暗いうちから歩き出すのも初めてだった。転付峠までは傾斜の緩い歩きやすい道。まじめに歩いていたわりには、コースタイムとほぼ同じだった。

ゆっくり休みたいところだが、ここからの長い下りが勝負だ。ここから先は地図の外となり、バス停までまったく目印なしだ。急登を下り沢に降り立つ。何度も徒渉しながら徐々に高度を下げるが、あとどれくらいでバス停なのかさっぱりわからない。10時のバスに遅れると、えらいことになってしまう。かなりあせりながら歩いていた。

林道に飛び出した。重荷を背負ってのアスファルト歩きは、足に負担がかかってつらい。しばらく歩いたところで、登りの人とすれ違う。ここまで40分歩いたと言う。ここではじめてバスに間に合うことを確信した。それでもバス停に着いたのは9:49。結構きわどい時間だった。

身延まではバスで1時間チョイだった。駅のトイレで顔を見たら、頭ボサボサ、ヒゲは中途半端。とても街を歩ける姿ではなかった。ザックを背負っているので、なんとか登山者だと認識されそうだが、リヤカーでも引いていたら勘違いされそうだ。恐らく体も臭かったと思うが、自分ではよくわからない。電車の中とか臭ってそうで気が引けた。乗り継ぎはほぼ順調で、3時前には松本に着くことができた。


■感想

前半、とくに最初の3日間は重荷でヒーヒー言っていた。こんなので光まで歩けるのか・・・という感じだった。しかし、北沢峠くらいからはだいぶなじんできて、中間の塩見あたりでは光まで歩き通せることを確信。

しかし、三伏峠から荒川小屋の日、その天気が悪かった一日だけでその確信は無残にも崩れてしまった。あえなく翌日には下山してしまうということに・・・。体力、気力は充実していただけに、本当に残念だった。

反省点としては主に、軽量化の徹底、雨対策の徹底があげられる。とくに今回途中下山の要因となってしまった雨対策に関しては、来年の北アルプスに向けては大きな課題となりそうだ。


南ア全山縦走 行程表のページへ
  
山登りのページ TOPへ