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南アルプス全山縦走 その2

(1999年7月26日〜8月11日)


1999年夏に17日間かけて夜叉神峠から入山し、鳳凰三山、早川尾根、甲斐駒ヶ岳、仙丈岳、三峰岳、塩見岳、荒川岳、赤石岳、聖岳、上河内岳、光岳、蝙蝠岳、白峰三山と踏破した時の記録です。

昨年の夏、目標としていた北アルプス全山縦走を、雨に泣かされ予定変更を余儀なくされたものの、まあ満足のいく形で終わることができた。今年の夏は何をしよう・・・と考えた時に、昨年の北アが自分の中であまりにも大きかったためか、今ひとつこれといった案が浮かばなかった。

候補としては、「北海道入り浸り2ヶ月」、「北アぶらり20日間」、「南アリベンジ」があった。楽しそうなのは北ア、興味深いのは北海道だった。しかし、おととしの敗退で釈然としてなかったのと、記録としての充実感、達成感などから、南アをもう一度やることにした。自分のレベルが上がっている中、おととしの計画そのままでは芸がないので、誰もしないようなルートどりで挑戦することに。


■7月26日(月)   夜叉神峠口⇒南御室小屋   晴れ時々くもり

夜叉神峠口(5:45発)⇒夜叉神峠(6:58〜7:15)⇒杖立峠(8:51〜9:08)⇒苺平(11:00〜12:00)⇒南御室小屋(12:25着)

今年の出発時のザックの重量は35キロ。おととしよりも3キロ少ない。行程は今年の方がずっと長いのに・・・。おととしはいったい何を持って行っていたのか・・・。3キロ少ないのが効いたのか、大縦走3年目で足腰が強くなったのか、苦しいながらも今年は余裕がある。

前回は初日から北沢峠までの稜線は、悪天のためほとんど展望がなかった。今年は初日から絶好の天気で、夜叉神峠からは大迫力の白峰三山を望むことができた。今日は視界が良く、聖岳まで確認できる。そして、最後に歩くことになる最難関の白峰南嶺も見えた。笹山まで登ってしまえば、あとは楽そうに見えた。本当かなあ・・・。あそこを歩くのかと思うと、なんだかゾクゾクした。
夜叉神峠からの白峰三山


直射日光が容赦なく照りつけるため、山火事跡や樹林の切れている所は汗タポだ。休憩は極力日陰でとった。岡山の老夫婦と前後しながら歩いていた。ペース的には前回より若干早いくらいだが、気持ちの上ではずっと楽だ。このぶんだとえらい早く着いてしまいそうだ。

苺平ではザックにもたれかかってしばらく寝ていた。虫がいなければいつまで寝ていたかわからないくらいだった。早く着くとヒマが長くなるので、ここで1時間くらいは休んでいた。単独の場合は話し相手でもいればいいが、一人ぼっちでヒマをつぶすのは結構苦痛だ。停滞は最悪!よっぽどでない限りは、雨の中を歩いていたほうがマシだ。

小屋の人が南アルプスオタクのようで、白峰南嶺の様子を聞くことができた。奈良田越から笹山までは、やはり手が入ってないらしく、倒木が多いとのこと。枝付き倒木は巻かなければいけないみたいで、結構大変らしい。あと水は適当に沢を下れば、すぐに手に入ると言っていた。こんなに早く白峰南嶺の情報が手に入るとは思わなかった。12時半頃から話し相手もなく、延々とヒマをこきつづけ、6時くらいには寝た。


■7月27日(火)   南御室小屋⇒早川尾根小屋   くもり時々霧雨

南御室小屋(5:33発)⇒ガマの岩(6:12〜20)⇒薬師岳(7:03〜20)⇒観音岳(7:49〜8:08)⇒アカヌケ沢の頭(9:22〜10:25)⇒高嶺(11:17〜42)⇒白鳳峠(12:40〜13:00)⇒赤薙沢の頭(13:21〜40)⇒広河原峠(14:15〜30)⇒早川尾根小屋(15:01着)

初日ということで疲れがあったのか、夜は途中で起きることもなく10時間ぶっ続けで寝ることができた。テントのところは風はないが、木の枝はユサユサと風にあおられているところをみると、稜線はかなり風が吹いていそうだ。

森林限界に出ると予想通り強風が吹いていた。また期待していた展望は、濃いガスで拝めない。じきに霧雨も降ってきた。きのうの天気で、今日もてっきり晴れると勝手に思っていたが、大間違いだった。ただ、たまに太陽の気配はあり、大崩れしそうな感じではなかった。観音岳の手前でガスが一瞬だけ晴れた。しかし、白峰三山は雲がかかっていて、せっかくの展望はおあずけ。

観音岳で少し粘ってみるが、あれ以降はガスが切れることはなかった。短パンにロングスパッツ姿で来ているにいちゃんがいた。だったら長ズボンで来いよ!と思った。今年もアカヌケ沢の頭にザックを置いて、地蔵岳へピストンしてきた。全山縦走に地蔵岳ははずせない。でもオベリスクには登れなかった。

高嶺への登りはしんどい。一日の行程の後半ということもあるが、前回に続いてニセピークにだまされてしまった。ここまではそれほど疲れを感じることなく来れたが、ここからの下りでペースダウン。ガレ場の下りでは、一歩下る度に荷物の重みがズシリと肩とヒザにくる。登っている方がマシに思えた。

赤薙沢の頭に登りつくと、いきなり仙丈が見えてビックリした。もう展望はあきらめていたのに・・・。北岳も右半分だけ見えていた。天気が良くなってきたというよりも、天気が悪いところを抜けたという感じだ。振り返ると、鳳凰三山のほうは分厚い雲に覆われていた。

最後はヘロヘロになりながら早川尾根小屋に辿り着く。テントは学生の団体が2張りと、夫婦のテントが1張りだけ。ビールを買いに行くと400円と安かった。安いですねと聞くと、「去年のなんですよ」と言っていた。6時半頃から小屋番による「小さな音楽会」が開かれた。尺八よりも少し細い、南米の民族楽器を小屋番が吹いていた。夜は学生がやかましくて、なかなか寝付けなかった。


■7月28日(水)   早川尾根小屋⇒北沢峠   くもり時々晴れ

早川尾根小屋(6:08発)⇒ミヨシノ頭(7:55〜8:08)⇒アサヨ峰(8:54〜9:50)⇒栗沢山(10:47〜11:50)⇒仙水峠(12:42〜53)⇒北沢峠(13:55着)

3時頃から学生がうるさい。ヘッドランプをビシバシと当ててきたので、眠かったのだが起こされてしまった。小雨だったが、テントに当たってきている。今日はきのうよりも悪そうだ。まあ、北沢峠までの短い行程なので、ゆっくりするとしよう。明るくなって外に出ると、雨は降っていたが北岳は見えていた。変な天気だ。

30分ちょっと歩くと、見晴らしのよい小ピークに出た。いきなり眼前に甲斐駒があってビックリ。北岳も見えている。予期せぬ展望に感激してしまった。ミヨシノ頭まで来るとアサヨ峰が見えた。ガス越しに見えたのでえらく遠く感じた。しかし歩いてみるとそうでもなかった。

アサヨ峰に着くと景色が一変し、伊那谷が見えてきた。しかし、肝心の甲斐駒はガスの中にあり、出そうで出ない。このまま歩くと、早い時間に北沢峠に着いてしまうので、一昨年に引き続きここで大休止。一人でボーっとしていた。ハエが多いのが気になるところだ。

栗沢山に着いた時も甲斐駒はガスの向こうだった。ここでも大休止して、甲斐駒が出るのを待つことに。粘っても無駄かと思っていたが、40分くらい経った時に甲斐駒が全容を現した。粘り勝ちだ。栗沢山からの甲斐駒は、想像どおりの大迫力だった。山頂部は白くて、雪が降ったみたいだ。

栗沢山からの急な下りは肩にこたえた。仙水峠にはテントは1張りのみ。北沢峠は平日にもかかわらず、かなりのテントがあった。一番小屋よりの一番川に近いスペースが空いていたのでそこに張る。川で体を拭いたり、買ってきたビールを飲んだりと、のんびりと過ごしていた。ヒマだったのでテント数を数えにいくと、90張りもあった。明日は各山岳ともあいにくの天気になるという予報だった。甲斐駒4連敗になってしまうのか・・・。


■7月29日(木)   北沢峠⇒甲斐駒ケ岳⇒北沢峠   くもり午後にわか雨

北沢峠(6:00発)⇒仙水峠(6:48〜50)⇒駒津峰(7:38〜45)⇒甲斐駒ケ岳(8:30〜10:45)⇒(10:55〜12:15)⇒双児山(12:36〜40)⇒北沢峠(13:31着)

今日は甲斐駒ピストンのみで、待ちに待ったサブザック行動の日だ。しかし、天気はイマイチ。あと、きのうから背中に痛みがある。今日は荷が軽いから良いが、明日以降のことを考えると心配だ。6時に出発した時には、雨がポツポツと降っていた。

仙水峠から駒津峰までの急登、前回は59分で登った。今日はこれより早いタイムで登ることを目標に頑張った。結果は48分。まあまあのタイムに満足。完全に自己満足の世界だ。この間に天気は回復してきて、甲斐駒本峰がバッチリ見えている。塩見も見えている。甲斐駒は過去3回登ったが、いずれも天気が悪くて景色を見ていない。天気が良いうちに早めに登ってしまおう。一生懸命登った甲斐なく、もう少しで山頂というところからガスになってしまった。

さすがに人気の山で、山頂はごった返していた。甲斐駒4連敗は避けたいので、なんとか粘ってでも勝に漕ぎつけたかった。あとは北沢峠に下るだけなので、時間は腐るほどある。10時頃になって甲斐駒付近のガスは取れてきたが、早川尾根、北岳、仙丈のガスはしぶとい。もうちょっと粘りたかったが、寒かったのであきらめることにした。

駒津峰も賑わっていた。ここでも大休止とした。ここは太陽が当たってポカポカ。これから登る人、下山する人が入れ替わりたち変わりやってきて、ここで休んでいく。そんな光景をひとりボケーッと眺めていた。帰りは双児山経由。北沢峠には「仙丈カールのテント場は使用できません」という看板があった。仙丈小屋を建て替えているようだ。おととしはそこで泊まったが、今年は使えないので、野呂川越あたりまで進むつもりだ。


■7月30日(金)   北沢峠⇒野呂川越   晴れ時々くもり

北沢峠(5:05発)⇒2合目(5:42〜47)⇒4合目(6:27〜35)⇒小仙丈(8:01〜20)⇒仙丈岳(9:02〜25)⇒大仙丈(10:12〜25)⇒伊那荒倉岳(12:02〜15)⇒高望池(12:21〜33)⇒独標(13:00〜10)⇒横川岳(13:48〜54)⇒野呂川越(14:11着)

となりにいた女グループが2時ごろからガチャガチャと始め、その音で目を覚ました。3時半頃に動きだし、外に出ると仙丈の上に満月の月が出ていた。ライト無しで歩けるほどの明るさだった。雲は見当たらず快晴!おかげで、フライシートは露でビショビショだ。

今回の縦走はここまで短い行程で抑えていたが、今日以降は長丁場が続く。今日は仙丈を越えて、できれば野呂川越あたりまでは進んでおきたいところだ。樹林の間から北岳が見えている。晴天の中、木漏れ日と鳥の鳴き声で気持ち良い。後ろには甲斐駒が見えている。森林限界に出ると視界が広がった。北アルプスは雲の中のようだ。

小仙丈より
小仙丈より甲斐駒ヶ岳




小仙丈まではほぼコースタイムどおり。この荷物なら上出来だろう。南は悪沢岳まで見えている。ここで今回初の人物入り写真を撮ってもらった。鞍部に下る岩場で老人グループの渋滞に捕まりながらも、北沢峠から4時間強で仙丈の山頂へ。早くも大仙丈にはガスがかかり始めてきた。山頂では海老なの夫婦にパンやらドーナツやらグレープフルーツやら、えらいご馳走になってしまった。グレープフルーツの皮まで捨てさせてもらった。ありがたや・・・。

ここから先はまったく静かで、誰一人としてこっちに向かっている人はいない。大仙丈あたりは花が多く、ヨツバシオガマ、ミネウスユキソウ、クルマユリなどが咲いていた。大仙丈の山頂には誰もいない。いい山なのになあ・・・。南アルプスはメジャーな山をちょっとはずれると、とたんに人がいなくなる。しばらく下ったところに女6人衆が休憩していた。朝3時に出発して行った、北沢峠でとなりだったグループだろう。入れ違いで休憩することにした。ここはいいテン場になっていた。野呂川越あたりにもいいところがあればいいんだけど・・・。

再び歩き始め、女6人衆を追う。何か目標があると頑張れるからうれしい。しばらくで追いついた。話しかけると、やはりとなりの人たちで、早川尾根で見たエスパースの人と同一人物だった。今日は両俣に下りて、明日は北岳に登るらしい。僕のほうも両俣でもいいんだけど、明日また登り返すのは面倒だ。高望池で水を手に入れられたら、稜線上のどこかで泊まりたい。

目立たない伊那荒倉岳を越えるとしばらくで高望池。池のほとりにすでにテントが張ってあった。水場は50m下ということで結構下るのかと思っていたら、すぐそこだった。3リットル補給する。3キロ増しはやはりズッシリと背中にくる。今まであまり汗をかかなかったのに、汗をかきはじめるようになる。昼になって暑くなってきたのもあるが・・・。荷物が重いと倒木の通過で体力を消耗してしまう。とくにくぐるかまたぐか微妙なヤツが困る。

しばらく樹林帯だったが、独標は展望の良い露岩。白峰三山の眺めが最高。仙塩尾根も見渡せる。あと3コブ越えて下れば野呂川越のようだ。横川岳の山頂も良いテン場になっていた。少し気持ちが傾いたが、野呂川越までは行くことに。そこになければ、ここまで戻らなければいけなかったりして・・・。

野呂川越に到着。まだ2時過ぎで、時間的にも体力的にも先に進めたが、いいところがなかったらシャクなので、今日はもうここで泊まることにした。小さいテント限定の良いスペースもあることだし。明日は雪投沢まで行きたいと思っているが、ここからだとコースタイム8:30なので、十分射程距離だろう。水が3リットルくらいしかないので、今日の夕飯は水をあまり使わない「アルファー米五目ご飯」。


■7月31日(土)   野呂川越⇒熊の平⇒雪投沢   快晴

野呂川越(5:05発)⇒三峰岳(8:33〜52)⇒三国平(9:24〜32)⇒熊ノ平(9:55〜11:10)⇒小岩峰(12:20〜31)⇒北荒川岳(14:01〜20)⇒雪投沢(15:11)

今日も天気は良さそうで、まだ暗い中、木々の間から月光が差してきていた。今日は核心の1つと考えている三峰岳の登りがある。前回はその日の後半にこの登りがきてえらく疲れたが、今回は朝イチなので余裕で登れるのではないか。はじめはダラダラ登りだが、岩峰が出てくると急になる。2つ目の岩峰で休憩。甲斐駒と仙丈が朝日を浴びてきれいだ。昨日の朝はまだあそこらへんにいたと思うとすごい。疲れはしたがやはり朝イチということもあって、余力を残して三峰岳に辿り着いた。


三峰岳から南の展望
三峰岳からの仙丈ヶ岳

三峰岳に着くと荒川三山がグッと近く。マイナーな山域を脱出し、これからはメジャーとは言えないがマイナーではない道を歩くことになる。下りになって足は楽になったが、肩と背中が痛くなってきた。三国平ではハイマツの平原の先に農鳥岳、塩見岳がいい感じで座っている。今日はこの時間になってもガスが上がってこない。北アルプスもしっかり見えている。槍・穂高の残雪は沢筋に残る程度。それに比べて立山は白いところが多い。

三国平から塩見岳を望む
熊ノ平小屋からの農鳥岳


熊ノ平小屋でビールを買う。今日のテン場の雪投沢で飲むやつだ。小屋のおばちゃんがテラスで弁当を包む紙を切っていて、しばらく話していた。白峰南嶺の情報もくれた。テラスは直射日光が照り付けてきていたが、とても気持ちが良かった。長居するつもりではなかったのに、ここで1時間15分も休憩してしまった。

ひと登りしたら稜線の東側を巻く道となる。稜線を歩くほうが気持ちは良いが、後半になって疲れた体には、アップダウンの少ないこの巻き道のほうがありがたい。小岩峰では視界が開ける。塩見がさっきにも増して近づいた。白峰南嶺も真横から見ることができ、よく観察しておく。北荒川岳への急登はさすがに疲れた。北荒川岳まで来るとさらに塩見が迫ってくる。迫力満点だ。北荒川のテン場にはテント2張りあった。

雪投沢に着く。前回は吹きさらしの所に張って失敗したが、今回は目もくれずダケカンバ林の中にあるスペースに向かう。雪投沢は本当に気持ちのよいところで、自分の好きなテン場ベスト3に入るだろう。テントを張ったあとは水場へ。体中ふきまくっておいた。とくに天然ポマード状態になっていた髪の毛は入念に洗っておいた。

少し離れたところに張っている女の人が、光からここまで来ているという話を聞き、暇つぶしがてらお話に行く。カッパを忘れてしまい、光小屋で笠をもらったとか言っていた。カッパ無しでよくここまで来たもんだ。ここから北岳まで行くみたいだった。


■8月1日(日)   雪投沢⇔蝙蝠岳⇒塩見岳⇒三伏峠   晴れのち時々くもり

雪投沢(5:27発)⇒北俣岳分岐(6:15〜22)⇒蝙蝠岳(7:29〜8:30)⇒北俣岳分岐(9:37〜55)⇒塩見岳(10:29〜52)⇒塩見小屋(11:34〜48)⇒本谷山(13:23〜35)⇒三伏峠小屋(14:25)⇒テン場(14:55着)

今日からとうとう8月。そして、地図も南部に変わる。天気は晴れっぽいが、少々風があるみたいだ。ダケカンバ林に張っておいて大正解。今日は蝙蝠往復して、三伏峠までの予定。そんなにキツくはないだろう。

雪投から北俣岳への登りは、朝のウォーミングアップにはちょっとキツ過ぎる。北俣岳の分岐の看板の少し下にザックをデポ。ほぼ空身で蝙蝠岳に向かう。こんな荷物だと遊びみたいなものだ。身も心も軽い稜線漫歩である。ここの稜線は展望ピカイチでお気に入りだ。展望の良さは5本の指に入るのではないか・・・。ハイマツが覆い被さったところを短パンで歩くのはちょっとつらいかも。最低鞍部は窪になっていて、お花畑もある。ここもお気に入りの場所だ。

蝙蝠岳4からの塩見岳
蝙蝠岳より南の山並み

蝙蝠岳山頂は360度の大展望。主稜線からチョコンと離れている山というのは本当に展望が良い。最後に歩くことになる、白峰南嶺を観察していた。山頂では塩尻の人と新潟の人と一緒になった。1時間くらい山頂でゆっくりし、この2人と一緒に主稜線まで戻る。

サブザック行動は楽で良いが、メインに戻った時のギャップが激しいので考え物だ。塩見岳東峰に着くが、人がウジャウジャしていたので、人が少ない西峰に移動した。塩見は登っても良い山だが、個人的には北荒川あたりから見る塩見が、迫力があって好きだ。

時計を見ると12:18を指していた。おかしいなと思い、カメラに付いている時間を見ると11:34。時計に電池切れマークがついていた。ヤバイなあ・・・。時間もそうだが、高度計が見れないのはつらい。せめて奈良田越から先の間だけでも高度計が欲しいなあ・・・。塩見小屋に着く頃には、半分くらいガスになってきた。残りの三伏峠までの間は、ただ「移動」という気分だった。

今回も沢小屋のほうにテントを張った。峠小屋のほうが開放的だがちょっと賑やか過ぎる。沢小屋のほうは単独や小人数がほとんどで落ち着いている。峠小屋でテントの受付をして、ビールを調達して沢小屋のほうへと下った。すでにテントが4張りあった。狙っていたスペースは女の単独行がすでに張っていた。仕方なく対岸に張った。この女の人は光岳までずっと一緒のテン場であった。(のちに松本労山で一緒になってビックリした)


■8月2日(月)   三伏峠⇒高山裏⇒荒川小屋   晴れのち夕方雨

三伏峠(5:05発)⇒烏帽子岳(5:56〜6:08)⇒前小河内岳(6:43〜53)⇒小河内岳(7:23〜35)⇒板屋岳(9:14〜25)⇒高山裏(9:57〜10:20)⇒水場(10:42〜52)⇒カールの底(12:16〜25)中岳分岐(13:51〜14:05)⇒荒川小屋(14:53着)

荷物がだいぶ減ってきて、パッキングが楽になってきた。今日は荒川小屋までの長丁場。その1で歩いた時のコースタイムを参考にしながら歩くとしよう。その方が地図のコースタイムよりもずっと役に立つ。天気は快晴で、そのぶん朝の冷え込みもあって露が降りていた。いつもは短パンでスタートだが、今日は長ズボンをはいて歩き始めた。

小河内岳からの富士山
その1では烏帽子からの稜線で強風が吹き荒れていて、ザックカバーが飛ばされてしまった。それが原因の一つとなって途中撤退ということになった。今日はそんな心配は全くいらない。小河内岳の小屋が建て替わっていた。前はズタボロだったが、新築されて小屋番がいて、簡単な食事を出すみたいだった。その小屋番は御岳のことを乗鞍と言っていた。


小河内から高山裏まではあまり展望のない樹林帯なのでスパートをかける。樹林帯に入ったところにいた人は、小屋泊まりで北岳から聖まで縦走するみたいだった。金持ちにちがいない・・・。一緒に歩きたそうだったが、遅そうだったので置き去りにした。板屋岳の手前くらいから男3人組と抜きつ抜かれつとなる。この人たちとは聖平まで一緒の行程で親しくなり、下山してからも付き合いがある人たちだ。


荒川岳の気持ちの良いカール
高山裏には目安にしていた10時ちょっと前に着いた。ここから荒川岳の稜線まで700mの登りが控えている。ちょっとゆっくり目に休んでおいた。水はそこそこ持っていたが、水場で冷たい水と入れ替える。しばらく水平な道が続いて、そのあと一気に荒川に向けての急登となる。急とが始まってからはとたんにペースダウン。後半ということで、かなり疲れてはきたが、開放的なカールの中を登るのは気持ち良かった。



荒川小屋までの下りは、疲れていてチンタラ歩いた。疲れている中、この下りの斜面のお花畑は気を紛らせてくれた。ここのお花畑は本当に種類が多い。荒川小屋に着きテントの受付。静かなところがいいですか?と聞かれたので、「ハイハイ!」と二つ返事で答えた。偶然にも前回と同じスペースだった。以前は給水施設があったが、今は跡形しかなく、今はそれよりも下のほうまで下って行かなければならなかった。明日の天気は「くもりか霧一時雨のち晴れ」という変な予報だった。

荒川岳からの南側の大パノラマ


■8月3日(火)   荒川小屋⇔悪沢岳⇒百間洞   晴れのちくもり朝方雨

荒川小屋(4:45発)⇒中岳分岐(5:40)⇒悪沢岳(6:28〜43)⇒中岳分岐(7:17)⇒荒川小屋(7:45〜8:27)⇒大聖寺平(8:57〜9:07)⇒赤石岳(10:53〜11:52)⇒百間洞(13:50着)

夜は時々雨が降っていたようだが、目覚めた時は月夜。良い天気になったと期待して外に出ると、月のところだけ晴れていて、あとは雲だかガスだかだった。風も強いようで、木がガサガサと揺すられていた。今回の縦走では、主稜線から少し離れた蝙蝠岳と悪沢岳をどう処理するかで悩んだ。今日はその悪沢岳処理の日だ。きのうピストンするにはちょっとキツイので、今日百間洞に向かう前にピストンすることにした。百間洞へは半日の行程なので楽勝だろう。

ほぼ空見で悪沢岳に向かう。きのう通ったばかりの道を戻るのでだるかったが、荷物が軽いので苦はない。悪沢岳はさすがに南ア南部最高峰というだけはある。きのう歩いてきた縦走路がはるか下に見下ろせる。朝方の雲はどこかに行ってしまったようで、山頂からは最高の景色を見ることができた。下りは荒川小屋まで1時間を切ることを目標に歩いた(走った)。結果は1時間01分。残念・・・。荷物が軽いからこそできる遊びだ。

小屋に戻ってテントをたたみ、百間洞に向かって再出発。軽い荷物に慣れた体には、このメインザックは拷問のようだった。大聖寺は風の通り道なのか、風が強いのでケルンに隠れて休んでいた。

赤石岳からの荒川三山
赤石岳から南の山並み
赤石岳は2回目。前回は天気が悪くて何も見えなかったが、今回は展望を遮るものは全くない。ただ、風が強くてかなり寒い。南アルプスはひとつひとつの山が大きいので、ひとつ越えると展望がガラリと変わる。大沢岳〜中盛丸山〜兎岳〜聖岳は独特の山並だ。南アルプスの中で最も気に入っている山並だ。山頂には7,8人いる。絵を書いている親子もいた。寒かったにもかかわらず、山頂では1時間ゆっくりしていた。
百間平
赤石岳の急坂を下ると、なだらかな尾根となる。ここからの景色は黒部源流のようだった。百間平が雲ノ平、中盛丸山が鷲羽岳・・・てな感じだ。「ミニ黒部源流」といったところか。最後は急坂を下って百間平へ。



水は流れているが、沢沿いにテン場があるので、水は小屋でもらうようになっていた。もらいに行く時、小屋の前で絵描き親子の娘の方としゃべっていた。帰りには三伏峠にいた単独の女の人とも話した。白根御池、熊ノ平、三伏峠、荒川とつないできたようだ。


■8月4日(水)   百間洞⇒聖岳⇒聖平   晴れのちくもり

百間洞(5:27発)⇒大沢岳(6:32〜40)⇒中盛丸山(7:09〜21)⇒小兎岳(7:55〜8:03)⇒兎岳(8:41〜9:20)⇒聖岳(11:03〜12:25)⇒聖平小屋(14:44着)

ほとんどの人は大沢岳に登らず、小屋からのショートカットのルートで登っていた。ボクは一応全山縦走なので、大沢岳へのルートで登った。大沢岳に着くと、反対側からおじさんが登ってきていた。ショートカットコースで中盛丸山との鞍部に登り、そこから大沢岳に登ってきていた。この方は2600m以上の山を全部登るのを目標としているらしい。

ここらへんは休憩にちょうど良いタイミングで山頂がある。大沢岳、中盛丸山、小兎岳、兎岳・・・と。兎岳と聖岳の間は、さすがに途中で一度休んだ。聖岳に登り始める頃から徐々にガスがかかりはじめてきた。今日はガスの上がりが早い。そろそろ天気は下り坂なのかもしれない。山頂手前では霧雨が降り出してきた。

聖の山頂には顔なじみがたくさんいた。南アルプス南部に入ると、泊まる場所がおのずと決まってしまうので、だいたい同じ顔ぶれになってしまう。2600m以上の山制覇のYさん、山梨のMさん夫婦、絵描き親子のSさん、会社の同僚3人組、対岸の女Nさん、お父さんと来ている学生のT君・・・等。あと、名前はわからないが、学生風のつがい、中年のおっさん・・・。Yさんが奥聖に行くと言うので、おともをさせてもらう。Sさんも同行。奥聖まではほとんどアップダウンはなかった。

この顔なじみ集団で聖平へと向けて下っていった。Yさん先頭でゆっくりペースだったが、ペチャクチャとしゃべりながら楽しく下った。Yさん夫婦とSさん親子は小屋泊まり、Mさん夫婦とT君親子はテント泊、会社の同僚3人組は素泊まり小屋とバラバラだったが、Mさん夫婦のテントの前に集結し、宴会が始まってしまった。最後はMさん夫婦、Sさん娘、T君の5人で7時半頃まで延々と話していた。今日がこれまでの中で一番楽しかった。

■8月5日(木)   聖平⇒上河内岳⇒光岳   雨

聖平(5:30発)⇒南岳(6:54〜7:01)⇒上河内岳(7:23〜38)⇒茶臼分岐(8:33〜43)⇒易老岳(10:53〜11:10)⇒三吉平(11:53〜12:03)⇒光小屋(13:18着)

夜中はかなり風が強かったようだ。起きた今は、風に加えて雨まで降り出してきている。撤収するのが億劫で様子を見ていたら、同僚3人組が来て「先に行きます」とあいさつに来てくれた。テントの中でのパッキング、カッパを着てのテント撤収とも、今回はじめてだった。とても惨めだった。

Mさんあいさつして出発。視界のない中、ひたすら登る。目標は同僚3人組に追い付くことだけだ。森林限界上に出てしまうと風が強いので、木の生えているうちに一度休んでおく。上河内岳へは縦走路にザックをデポして、カメラだけを持って向かった。山頂手前で下ってきている同僚3人組とすれ違った。山頂はすごい風で、とてもじゃないけど休める状態ではなかった。

3人組には下りで追いつき、せっかくのなで一緒に歩くことに。茶臼の分岐で3人組とはお別れ。予定では横窪沢だったが、天気が悪いので一気に下山するようだ。高山裏以来の長いお付き合いだった。またひとりで歩き出す。雨は強くなっていて、時折パサパサとカッパに叩きつけてくる。こんな状態なので茶臼岳は素通り。樹林帯、樹林帯・・・と先を急いでいた。

易老岳で休憩している人がいた。茶臼から光岳ピストンの帰りらしい。こんな時間に戻って来れるなら、今日は茶臼どまりにして、明日ピストンでも良かったかな・・・と思えてしまう。少し天気は持ち直してきたのか、西の山(恵那山他)を見ることもできた。

センジヶ原までの沢状の登り。ここは気持ち悪い生物の宝庫だった。ムカデとミミズの中間くらいのヤツ、ヘビとミミズの中間くらいのヤツ、ナメクジのようなヤツ・・・、こういう系統は大の苦手なのだ。木道になってやっと安心したが、何故か鼻血が出た。栄養不足か疲れか・・・。昨年の北ア40日では、一度も鼻血は出なかった。

雨の光岳(やっと折り返し点)

光小屋はえらいきれいだった。受付をしてテントを張ろうとしたらまた本降り。小屋番に「中で休んでいれば・・・」と言われ、様子を見ていた。すると対岸の女Nさんがやって来た。先に聖平を出発していて、着いた時ここにいなかったので、茶臼に行ったものと思っていた。聞くと、一度茶臼小屋に行ったが、思い直してここまで来たようだ。

しばらくで雨は上がり、テントを張る。そして今回の縦走で最南端の光岳山頂に行ってきた。通常の全山縦走ならここで終点だが、ボクの計画では単なる最南端で、これから北岳まで北上しなければならない。

この雨は南海上にできた熱帯低気圧からの湿った南風によるものと判明。そして、この状態は数日間続くとのことだ。やれやれ・・・。


■8月6日(金)   光岳⇒上河内岳⇒聖平   くもり時々雨

光小屋(7:32発)⇒易老岳(9:06〜17)⇒茶臼岳(11:25〜37)⇒お花畑(12:16〜23)⇒南岳(13:33〜40)⇒聖平(14:24着)

朝から雨。さて、今日はどうしよう・・・・。当初の計画では、今日は横窪沢、そしていったん林道に下って、中の宿から所ノ沢越に登り、そこから白根南嶺を北岳まで北上するというもの。しかし、この雨続きで弱気になり、笊は転付峠からピストンしようかという気持ちが大きくなっていた。なんといってもフライシートのファスナーが全開の状態で壊れてしまったのが痛い。また本体の方の入口のファスナーの縁も破れてしまった。このテントももう60泊以上しているからなあ・・・。破れたファスナーの縁からだと思うが、出発前にヒルが侵入してきていた。かんべんしてくれよぉ〜。

しばらく様子を見ていたが、雨が上がる様子はない。とりあえず、きのう来た道を戻ることにした。そして、歩きながらどうするかを考えることに。沢状のところではきのうよりもたくさん気持ちの悪い生物を見た。易老岳まで一気に歩く。今日はまた聖平まで行くことにした。そして、明日は二軒小屋まで行こう。そのあと転付から笊を往復というパターンに決めた。

休憩する気にもなれず、ただひたすら歩くのみ。きのう通ったばかりの道、通常ならつまんないところだが、今日みたいに天気の悪い日には、かえってわかっている道のほうが良い。フライのファスナー全開、本体のファスナーの縁の破れ、靴がグチョグチョ、カッパビショビショ、シュラフビショビショ、テントビショビショ・・・とうことで、今日は素泊まり小屋も考えていた。無理してテントで泊まって、これ以上ズタズタになると今後にも影響しかねないから・・・。

聖平に着くとテントが一杯あった。素泊まり小屋も結構な人。結局、テントを張ることにした。4時頃になって太陽が出てきた。ここぞとばかりに濡れた物を干すが、もう日は落ちる直前なので期待はできない。この日差しはほんのしばらくで、また雨が降り出してきた。明日の南ア南部の予報は「くもりか霧時々雨」ということだった。さっき日が照って、回復傾向かと思ったが、残念ながらちがっていた。


■8月7日(土)   聖平⇒椹島⇒二軒小屋   くもり時々雨

聖平(6:58発)⇒聖沢吊り橋(9:36〜53)⇒林道(10:36〜11:00)⇒椹島(11:57〜12:55)⇒(バス)⇒二軒小屋(13:00前)

夜中は風がザーッと吹いてきては、雨がパサパサッと降ってくるというパターンだった。3日連続の雨でかなり縦走に対する執念みたいなものが薄れてきている。熱帯低気圧は台風8号に変わり、現在枕崎付近にいて北北西に進んでいる。990hpと勢力は弱いが、活発な雨雲を伴っているようだ。気持ちはかなりだらけ気味だったが、北岳までは行くという気持ちはしっかりと持っていた。

いつまでもボーっとしていても仕方ないので出発することに。靴は吸えるだけ水分を吸っており、メチャクチャ重くなっている。靴ズレが心配なので、ヤバそうなところに予めバンドエイドを張っておく。去年の北ア二の舞だけはゴメンだ。雨は小降りになっていて、時折止み間もあった。沢沿いの道から尾根を越すところで登りとなる。下山なのに・・・。

中間くらいで雨はほとんど降らなくなり、カッパを脱ぐことに。久しぶりにカッパ無しで歩ける。カッパを脱ぐと、汗だか雨だかわからないが、服はビショビショだった。聖沢の吊り橋は濡れていて、滑って転んでしまった。ここからはまた緩やかな登り。聖岳の東尾根の取り付きとか確認しておいた。

林道を歩いていると、下りで抜いたおば様たちに抜き返されてしまった。重荷の林道歩きは、たいがいコースタイムオーバーしてしまう。あまり力を入れて歩くと、靴ズレの原因にもなるし・・・。

二軒小屋まで歩く気でいたが、椹島に着いたとたん、また雨になってしまった。ここで泊まろうかとも思ったが、雰囲気は二軒小屋の方が数段良いので、やっぱり二軒小屋まで行くことにした。でも、この濡れた靴で林道を延々と歩いていたら、靴ズレがひどくなるのは必至。この先に影響しそうなので、軟弱だがここはバスの力を借りることにする。送迎バスということでかなり渋々だったが、なんとかバスに乗せてくれた。乗客は10名。椹島から乗るのはボクだけ。

二軒小屋は明るいテン場なので、雲っていても陰気な感じはあまりしない。テントを逆さにして乾かして、その間に流しへ洗濯に。すると雨が降り出し、あわててテントを張って荷物を取り込む。しばらくで止み、日が照ってきた。直射日光の威力は絶大で、テントはあっという間に乾いてくれた。問題は靴と靴下だ。半分以上が青空となり、濡れた物を干しまくる。と思ったら、急に雲行きが怪しくなってきて今度は土砂降りに。芝生の上なのにテントの床がプヨプヨしていた。夕立みたいな感じだったのか、この土砂降りは少しで止んでくれた。

二軒小屋にはお風呂があり、夕食前に入りに行った。頭を洗うが、1度目は泡が立たない。2度目でやっと泡立った。結局3回洗った。洗濯もしておく。Tシャツは雑巾をしぼったように、ゆすいだ水が茶色くなった。

天気予報によると明日は回復するとのこと。動きたいところだったが、明日は一日ここでゆっくりするととにした。雨続きで心身ともに疲れていたし、靴が完全に乾いて欲しかった。濡れた靴での長い登りは靴ズレの元だ。去年の北アがあるので、靴ズレに対して過敏になっている。


■8月8日(日)   二軒小屋   晴れ時々くもり

空は真っ青に晴れ上がっている。さすがに晴れの日に停滞するのは初めてだ。今日一日何をしようか・・・。洗濯物は良く乾いてくれることだろう。しかし東側は山が迫っていて、なかなか太陽が出てこない。テン場に立っている木に細引きを渡して、物干し場を作った。靴以外はすぐに乾いてくれそうだ。問題は肝心の靴。強引に直射日光に干していた。

今日の停滞は装備を乾かすことが目的。干している間はなにもすることがない。とりあえず、高校野球をやっているのが救いだ。それ以外には、日記を読み返したり、食糧のチェックをしたりしていた。笊ヶ岳は不本意だったがあきらめることにし、明日は蝙蝠岳に登ることにした。明日は雪投沢泊の予定。次は農鳥、その次に北岳に登ることにした。昼頃に暇つぶしを兼ねて、登山口の偵察に行った。持っている登山地図にある登山口はなくなっていて、さらに上流のほうに新しくできたようだ。

今後の行程を計算すると、全18日で終わりそうな感じだ。食糧にはかなり余裕ができたので、今日は昼メシを2回食うことにした。ヒマは持て余し気味だったが、昼間からビールを飲んだり、昼寝をしたりと、堕落した生活を送っていた。夕方になって少し雲行きが怪しくなったが、一日を通して雨は降らず、洗濯物は靴以外は全て乾いた。靴もちょっと湿っているくらいだったので、履いているうちに乾いてくれることだろう。


■8月9日(月)   二軒小屋⇒蝙蝠岳⇒雪投沢   晴れ時々くもり

二軒小屋(6:04発)⇒徳右衛門岳(9:27〜40)⇒2721P(10:45〜11:20)⇒蝙蝠岳(11:53〜12:15)⇒北俣岳分岐(13:51〜14:00)⇒雪投沢(14:20着)

きのうの昼寝がきいたのか、なかなか夜は寝つけなかった。おかげで目覚めは最悪。眠気にムチを打って体を動かした。外に出ると星がたくさん出ている。快晴のようで、そのぶんフライにはたくさん露が降りていた。

林道を20分ちょっと歩いて登山道に入る。通る人が少ないのか、踏み跡がかなり薄い。尾根までは急な道で、尾根に出た後はアップダウンを繰り返しながら徐々に高度を稼ぐ。東電の施設にある階段はきつかった。徳右衛門岳への登りが始まるところに、ペットボトルがぶら下がっていた。おそらく水場の印だろう。徳右衛門岳の山頂は小河内岳や荒川岳の眺めが良かった。

道は相変わらず踏まれてなくて、整備も入っていない。ボーっと下ばかり見ていると、道をはずしてしまいそうになる。2721P前には枝付きの倒木があって、通過に苦労した。そして、ハイマツのトンネル、アザミ地獄を通りぬけると、ヒョッコリと森林限界上の尾根に出た。劇的な抜け方だった。見事な展望が待っていた。こんなにドラマチックな場面は久しぶりだった。山をはじめた頃は、稜線の反対側の景色を見た時はいつも感激していた。最近は目が肥えてきたのか、感激することはあまりなくなっていた。2721Pでは、たっぷり45分間休憩した。もっといたいくらいだった。

森林限界上に飛び出すと蝙蝠岳が
ここから蝙蝠岳まではほとんど踏み跡もついてない状態。ハイマツの切り開きにだけ注意していた。岩屑のところはテキトーに登っていく。山頂直下には薄い踏み跡がいくつもある。晴れていればどこでもいいが、ガスが濃い時はちょっと不安だろうなあ。

今回2度目の蝙蝠岳。何度来ても良い山だ。南アルプスのど真ん中といった感じだ。ここで携帯が通じたのにはビックリ。笊と白根南嶺は心残りだが、こっちのルートはこっちのルートで満足できた。ここからは勝手知ったる道。しかし、今日はメインザックを背負っており、ハイマツのトンネルのところでは、ザックが引っ掛かって大変だった。きのう一日休んだせいか、荷物が軽くなったためか、ここまで疲れもなく快調だったが、北俣岳のギザギザ尾根あたりになると、さすがに疲れてしまった。



雪投沢に着き、迷わずダケカンバ林に向かう。しかし、良いスペースはすでに先客がいた。仕方なく、水の通った跡があるところに張る。何かの虫がテントに卵を産み付けていた。石で取ろうとしたら、パラパラと卵が落ちてきて、テントに散らばってしまった。気持ち悪いよぉ〜。明日は天気が悪そうだ。悪天はまたしばらく続くと言っていた。やれやれ・・・。


■8月10日(火)   雪投沢⇒熊の平⇒農鳥小屋   雨

雪投沢(5:55発)⇒熊ノ平(9:18〜33)⇒水場(10:53〜11:03)⇒農鳥小屋(12:20着)

夕べからの風に加えて、夜中から雨も降り出してきた。雨は降りっぱなしではないが、今日は最悪の天気になりそうだ。ただ救いなのは、北荒川から熊ノ平までは樹林帯で、しかも巻き道。三国平から農鳥までも巻き道となっていることだ。あとは水が素通りになっている靴が心配なだけだ。

ダケカンバ林を抜けると強風が吹き荒れており、風でテントがひとつつぶされていた。停滞組もいそうだが、こんなところで停滞するなら、歩いた方がずっとマシだと思う。熊ノ平までは、少し休んだだけでぶっ通しで歩いた。荷物はもう軽いので、続けて歩くのもそう苦ではなくなった。というよりも、落ち着いて休んでいられない天気だった。

熊ノ平の小屋に着くと、南下の時に話をしたおばちゃんが外に出ていた。ちゃんと覚えていてくれたみたいだ。三国平は予想通り強風。そして農鳥への巻き道に入る。早く着いて農鳥を往復しようと思っていたが、雨が激しくなってきたのでどうしようかというところだ。学生の団体とすれ違う。北岳山荘からで、今日は天気が悪いので停滞の予定だったが、風が強くて落ち着かずに出てきたと言っていた。水場で3リットル汲んでおいた。

農鳥小屋のテン場も強風が吹き荒れていた。一日雨の中を歩いていたので、手が動かない。受付けで住所を書く時なんかは大変だった。こういう時、長い住所は不利だ。テン場には4,5張りあるが、恐らく全部沈没中だろう。今日はさすがにビールはやめて、日本酒を買った。テントに入ってコンロを焚き、日本酒を熱燗にして飲んだ。

明日の予定は、@晴れれば白根南嶺を行けるところまで行ってピストン、A雨なら農鳥岳を往復して、北岳に登って北岳山荘に泊まる、B農鳥岳を往復して、北岳に登り、一気に広河原に下山。なんか明日は晴れそうにないので、Aの可能性が一番高そうだ。


■8月11日(水)   農鳥小屋⇒北岳⇒広河原   雨のちくもり

農鳥小屋(5:20発)⇒農鳥岳(6:14〜20)⇒農鳥小屋(7:05〜16)⇒間ノ岳(8:37〜53)⇒北岳山荘(9:47〜10:00)⇒吊り尾根分岐(10:47〜55)⇒北岳(11:13〜12:00)⇒二俣(13:35〜42)⇒広河原(15:23着)

夜中はすごい風で、テントの壁がビシバシと顔に当たってきてよく眠れなかった。外に出てみると、雲は多いものの星も出ていた。天気はだいぶ回復したようだ。風も東風から西風に変わっていた。きっちりと回復していれば、白根南嶺にいくのだが、ちょっと微妙なところだ。どっちに転んでもいいように準備をして、もう少し様子を見てから決めよう。

4時半頃になって、霧雨が降り出してきた。これで今日の白根南嶺はなくなった。テントを張りっぱなしで農鳥に行くつもりで出発しようとしたが、あまりにも風が強いので不安になり、やっぱりテントをたたんでおくことにした。メインザックに放り込み、岩陰においておく。

雨の農鳥岳

農鳥岳へはただ「行った」というだけ。なにも景色は見えなかった。この強風の中、農鳥岳の山頂で上半身裸で写真を撮っている人がいた。テン場に戻るがテントの数はほとんど同じ。停滞か様子を見ているのか・・・。メインザックを背負って間ノ岳に向かう。雨は降っていないが、ガスで真っ白けだ。山頂もやっぱりガスで、展望はなし。

間ノ岳の下りから天気はマシになり、北岳山荘まで降りると北岳が見えかけていた。少し粘っていたが、あと少しのところで姿を現さない。テン場にはまだたくさんテントがあった。天候が回復してきたので、撤収している人たちもいる。ここにザックを置いて、空身で北岳ピストンしようとも思ったが、縦走最後のピークなので、ザックも一緒に連れて行ってあげることに。キツイ登りだったが、最後のツメは一歩一歩噛み締めながら足を運んだ。

最後のピーク北岳

着いた・・・。途中、コースを変更したりして充実感には欠けるものの、最後の山頂に登りついた。最後が北岳というのは我ながらなかなかだ。最後がしょーもない山だったら、「まーいいか・・・」てなことにもなりかねなかった。天気が良くなってきたのでもう1泊しようかと思ったが、さっきまで少し効いていた展望がまたなくなった。そしてまた霧雨。これで今日は下山決定だ。あとはバスの時間だ。コースタイムどおりに降りれば、16:30発のバスに間に合いそうだ。

下り出すと本降りになってきた。二俣までは一気下り。そこまでは快調だったが、この急な下りで靴ズレがひどくなり、二俣から先はヨタヨタ状態に。白根御池の分岐までは大きくコースタイムをオーバー。最後は足を引きずりながら広河原へ。なんとかバス出発の15分前に着くことができた。少しゆっくりしたかったが、カッパを脱いだりと身支度をしていたら、すぐに出発時間となってしまった。

バスで甲府まで行き、時間も遅いことだし甲府からはリッチにスーパーあずさに乗ることに。電車は混んではなかったが、窓、通路側とも開いているところはない。雨に濡れてかなり臭いはずなので、人のとなりに座るのは気が引ける。仕方なくデッキに立っていたが、韮崎で一番端の席が空いたのでそこに座らせてもらった。近くの人は臭ったかなあ・・・。松本に着いたのは19時40分。大糸線に乗り換え穂高駅へ。駅を出るとタクシーの勧誘にあった。これから登る人と間違えたのだろう。タクシーに気は引かれたが、最後まで歩ききろうとがんばる。でも、ウチまでの緩い登り3キロはかなりこたえた。

家に着く。片付けは一切しない。風呂に入って、ヒゲをそった。これで縦走最後の夏が終わった。


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