右へ左へきわどくヘツリながら進んできたこの一連のゴルジュ。出口2つ手前のヒョングリの滝3段5mが立ちはだかった。水流の右側から取り付く。水流の圧はかなり強く、水の中に足を置くことは無理。水流に足が当たると弾かれる。じわりじわりと右壁をへつり、落ち口手前でハング気味の壁を細かいホールドを拾いながら登り、最後は落ち口へとトラバースして登り切った。かなりテクニカル(ボクにとっては)だった。
ホールドを探せ!
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3段5mヒョングリ滝
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同左 これが抜けれずに敗退
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少し先の立ち木で支点を取り、登ってきたルート通りにフィックスを張りたかった。側壁にハーケンを打つが、イマイチ決まらない。もっとしっかり打ちたかったが、足場が不安定で難しい。A0でもできればと思ったのだが・・・。I川氏が登ってきた。右壁のハーケン経由では苦しそうなので、ロープをはずして水流直でロープをたらした。水流をまたいで来たので、お助けシュリンゲで強引に引っ張り上げた。
次はT世さん。T世さんには水流突破は難しいだろう。右壁を登らせるが、こちらも厳しそう。ゴボウはやめて、両手でホールドを探して欲しかったので、ザイル登高器をセット。これが失敗だった。足を滑らせて瀑水にさらされてしまった。下からU田君が助けて事なきを得るが、さらされた状態が長く続いたら、かなりヤバかっただろう。ボクもプルージックで確保しながら水流をまたいで下降していた。ところが、あまりの水圧に耐えかねてスリップ。頭が下の状態で瀑水に揉まれる。うう〜息ができない。またまたU田君に助けられ、なんとか体勢を戻すものの、テンションのかかったプルージックが緩まない。落ちるの覚悟でハーネス側をはずす。ああ〜ヤバかった・・・。このあとは全身ブルブル(振幅の大きい)状態になった。
滝の水流を懸垂下降して、瀑水に揉まれて死亡した事例は知っている。登りの場合も同じことだった。滑ったり落ちたりした時に、水流にさらされる可能性のある場合は、ロープで確保するべきではなかったな。どんなに時間をかけてでも、ボクが登ったルートにフィックスを張るべきだっただろう。ハーケンが上手く効かずにあきらめたのが失敗だった。やはり安全を最優先しなくてはいけない。3段にはなっているが、一番下は釜だし。あちこち青アザはできるかもしれないが、釜にドボンで済むだろう。
そういうわけで、これ以上無理する必要はなし。敗退ということで引き返そう。しかし、上にはI川氏がいる。ボクのザックも・・・。もう一度登ってザックを回収し、I川氏と懸垂で降りよう。ところが、握力がなくなっていて、岩をつかんでもすぐにパンプしてしまう。ザイルも握れなくなってしまった。これでは到底登るのは無理。ザックはザイルでおろしてもらって、I川氏にはがんばって一人で懸垂で降りてきてもらうしかない。上にいる時に、その気になって見ていないので、懸垂のルートは指示できない。全てI川氏の判断でがんばってもらうしかない。なんとか左岸をトラバースできたようで、無難に降りてくることができた。
この沢の下降は意外とあっさり。何度か懸垂はあるかなとおもっていたが、結局はロープを出すことなく降りてくることができた。最初の7m滝は左岸側を高巻き。他にはほとんどなかったが、ここにだけ踏み跡らしきものがあった。なにより驚いたのが、高巻きの取り付き(上からの)にお地蔵さんいたこと。昔は道があったのかなあ・・・。残る難関は最後のヤブ。行きよりは上手くヤブの弱点を突くルート取りができたかな?とはいえ、むさ苦しいことこの上なし。
とりあえず無事下山。意味ナシに終わった自転車を回収し、温泉温泉!糸魚川周辺には色々と温泉はあるみたいだけど、結局は小谷村の道の駅「深山の湯」でスッキリする。白馬で腹も満たし、あとは帰るのみ。
さて、瀑水を浴びた後、握力がなくなってしまったのだが、もしかしたら「コールドショック」とやらの初期症状だったかも・・・?顔は真っ青になっていたみたいだし、筋肉が極度に疲労していた。とくに手は岩をつかんだだけでパンプしてしまう状態。あまり筋肉痛にならない体質なのだが、帰宅後から翌日いっぱいは、上半身が大変な筋肉痛になってしまった。たまのクライミングでもこんな筋肉痛にはならないのに・・・。どこで使ったのか腹筋も痛い痛い・・・。身体全体の脱力感もすごかったなあ・・・。
帰宅後にガイドブックを見ると、載っている写真の水量とは比較にならない。まあ、ガイドの遡行日は11月だからなあ・・・。撤退の滝も「水流を跨いで登る」なんて書いてあるが。今日の水量では不可能。高巻きもかなり戻って大高巻きになりそうだし・・・。沢登りのグレードは、水量やその他の条件によって大きく変わってくるんだということを再認識。反省することも多かったし、新たな経験の蓄積にもなった貴重な山行だった。沢登り2度目のU田君には、なかなか美味しい思いをさせてあげられなかったのが残念。でも、あの滝まではずいぶん楽しめたような気がするが・・・・・?