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冬の餓鬼岳 時間切れ敗退・・・


久しぶりの1人雪山だったけど、ヤブ漕ぎとラッセルに阻まれた


最終日に見えた唯一の餓鬼岳


 山域  北アルプス 餓鬼岳
 山行日時  2010年12月25日(土)〜28日(火)
 登山形態  積雪期
 メンバー  単独
 温泉  

ルート図は一番下にあります


冬の餓鬼岳は一般的ではないと思っていた。ネットではほとんど記録がありません。ある時、エアリア(山と高原地図)を眺めていたら、餓鬼岳と大凪山の間の2235m点から南東に伸びる尾根に薄い破線があるのを発見。破線があるのは上部約1kmのみだが。この尾根を辿っていくとマムシ平に降り着く。マムシ平には林道が伸びている。試しに行ってみるか・・・。

■12月25日(土)  あづみの公園⇒マムシ平の橋  くもり

今年は本格的な雪が遅く、行く直前になってギリギリ降ってくれた。直前ってのもうれしくはないんだが・・・。24日が強い冬型で、その後もしばらく冬型が続きそうな感じ。常念山脈というのは内陸の山なので、低気圧が通って冬型になりたての時は大荒れになるが、ダラダラと安定した冬型の場合は意外と悪くはならない。25日の午後から出れば、ちょうどそのダラダラ冬型の期間にはまりそうだ。

あづみの公園付近(12:55)⇒マムシ平先の橋(15:00頃)

この尾根、何尾根って言うんだろう?名前付いているんでしょうか?釣魚沢右岸尾根とでもしましょうか・・・。マムシ平の尾根取付きから標高差600mの間は泊まり場は期待できない。一気に600m上がって泊まるか、下の取り付きで泊まるかのどちらか。今日の半日を上手く利用して、取り付きで泊まることにしよう。お昼にウチを出発。T世さんに送ってもらう。

 
ここからスタート 小屋があった

「国営アルプスあづみ野公園」への取り付き道路から2キロ入ったところで道が少し狭くなる。この先もとくに通行止めにはなっていないので車は入れるが、ここから歩き始めることにした。新雪は5センチくらい。あんまり降っていない。天気は小雪がチラチラ程度。

 
辿る尾根が見えてきた 橋脚がドミノ倒しに・・・

乳川沿いの林道を遡る。けっこう仕事の車が入るようで、すでに数台のタイヤの跡がある。マムシ平を抜け、乳川を渡る橋の手前でチェーンがしてあった。なんでここにきてチェーン?橋に行くと橋脚がドミノ倒しに倒壊していた。車はおろか、人間も渡るの大変そう・・・。濡れずに乳川を渡渉するのは無理。倒壊した材木が折り重なっていて、それを伝って対岸に渡るしかない。重い荷を背負ってこの材木を渡るのは恐かったので、まずは空身でルート工作。渡った対岸が取り付く予定の尾根なので、空身のまま取り付き偵察もしておく。少し進むと廃屋となった営林署の小屋があり、その先には倒壊していない橋が架かっていた。取り付き斜面は杉の植林になっていてよく見えない。地形図ではどこを登っても同じようなもんなので、結論はテキトーに登るということに。

 
水汲み  乳川本流にて 本日のお泊りは林道の上

再び倒壊した橋を渡り、荷物を背負って渡りなおす。怖い怖い・・・。対岸の林道上を今日のテン場とする。乳川から水が取れるのでガスの節約になる。とかいって、火は点けっぱなしなんだけど・・・。今日はラジオなど音の出るものは何もない。ヒマだ・・・。1人カラオケをやるが、すぐにアホらしくなる。乳川の沢音が子守唄になり、あっさりと眠りに就いた。

■12月26日(日)  マムシ平の橋⇒1750mテン場  小雪

今日の予定は行ける所まで、ひたすら尾根を登り続ける。明日、餓鬼岳を往復できる位置までは進んでおきたい。天気は小雪。天気には期待していない。どっちみち針葉樹の展望なしの尾根だろうから。ちょっと寝過ぎたか・・・遅い出発になってしまった。

テン場(7:40)⇒1500m付近(10:20)⇒1662m(12:40)⇒1750mテン場(14:15)

さーて、どこから取り付こう。手前の植林と雑木林のコンタクトライン沿いに突っ込む。徐々に傾斜が増していき、急なルンゼを詰めるようになる。雪付きが悪く、下地が凍ってて行き詰まる。アイゼン着けてりゃよかった・・・と後悔。えいやー!の連続で木を伝い、何とか登り切ることができた。ちなみに下りはアイゼン着けた。

 
取り付き斜面  凍ってて恐かった 尾根筋には金網が・・・

尾根筋には金網が張り巡らされていた。何の金網なんでしょ?ちょうど歩きたい位置に金網があるもんで、かなりジャマだった。意外にも赤布があって、程よい感覚で付けられている。マイナーな餓鬼岳にしてはメジャーなルートなのかもしれない。笹の滑り台の上に薄く新雪が積もっている。滑ること滑ること!1500mを越える頃からシャクナゲがうるさくなってくる。体はすり抜けてもザックが引っ掛かる、ストックの深雪リングが引っ掛かるわで大変。気が狂いそうになる。

 
尾根の下部はこんな感じ シャクナゲのジャングルは辛かった

1662m地点で初めて平坦地が出てくる。ヤブはおとなしくなってきたけど、今度は雪が増えてきてラッセルで消耗。一難去ってまた一難。次から次から敵が変わる。途中、木に「→松川駅」とペンキで書かれたのがあった。書いてある高さ的に無雪期だろうから、昔はこの尾根に夏道があったと推測できる。かなり古い赤テープも見られるし。さすがに雪があるので、地面の形跡はわからない。

 
こんなペイントも 本日のテン場は快適

はかどらないなあ・・・と思いつつ登っていると、1750mあたりに絶好のテン場が!船窪状の快適テン場。2泊するとなると、それなりの物件が欲しいところ。でも、まだ14時過ぎ。この先のテン場候補地形は1825mの先か、さらには2063mまで登らなくてはならない。1825mに優良物件がなければヤバイというか、登り切らないだろうなあ・・・。ということで、本日はここまでとした。

ここで2泊することになる。時間もあることだし丁寧に整地。フカフカの雪なので締りが悪い。日が暮れると大町の夜景が見えた。夜になって時々強風が吹くようになる。たまに木からドサッと雪の爆弾が落ちてきている。テントに落ちてこないことだけを祈る。

■12月27日(月)  1750mテン場〜約2125m 往復  小雪

今日も天気は良くない。小雪がチラついている。でも風がないので穏やかだ。早く出るつもりで早く起きたが、どうも明るくならないと行動できない。今日は森林限界上での行動が予想されたので、メガネではなくコンタクト。コンタクトをつけるのに手間を食ってしまった。鏡が曇って見えないのでした。

1750mテン場(7:05)⇒1825m(8:00)⇒2063m(11:35)⇒約2125m引き返し点(13:35〜50)⇒2063m(14:20)⇒1825m(15:00)⇒1750mテン場(15:30)

朝からワカンを履いての出発。ワカンで歩くのなんて何年ぶりなんだろう・・・?ラッセルは膝上くらい。テン場から1825mまでは距離にして約300m。1時間かかった・・・。これは餓鬼岳まで届かないかなあ・・・?餓鬼岳まで届かないにしても、せめて夏道の尾根までは行ってみたいところ。

 
今日も密林から始まります シャクナゲはホント手強い

2063mへの登りは斜度もあり、ヤブもあり、笹の滑り台もあり、苦難の連続だった。1人ラッセルというのは、1日行動する体力を計りながら、息が切れない程度に力を入れてラッセルすることになる。全力でラッセルし、疲れたら次に託すという数人でのラッセルとは全く違う。進みは遅い。結局は夏道の尾根まで距離約200m、高さにして100mチョイを残してタイムアウト。思ったよりもラッセルが厳しかったですな。

 
尾根っぽい尾根 本日はここまで・・・

おおよそあと3時間足りなかったってことになるかな・・・。初日から気合入れて、フルに行動していれば餓鬼岳に到達できたかもしれない。けど、まあ結果論です。もともと見当も付かないルートだったわけだし。積雪期の餓鬼岳を確実に仕留めるには、初日に頑張って1662mまで登り、2日目で2063m先まで、3日目で餓鬼岳ピストンし、4日目が下山。この行程が一番理にかなってると思われます。3日目以外は針葉樹林帯なので、少々荒れ模様でも大丈夫。ピストンの日だけ晴れればいいって感じですかね。

 
大凪山が見えてるはず 自分の付けた足跡を戻る

6時間半かけて登ったところを、帰りは1時間40分。帰りは早いけど、平らな部分が多いので、感覚的には長く感じた。標高差は400mもないですから。最後はさすがに疲れた。冬は行動中あまり食べないが、きのうと今日で箱のアーモンドチョコ半分だけ。それでも腹減らない。テントの中で食えるだけ食っとくってもんかな。あまり食えなかったが・・・。

■12月28日(火)  1750mテン場⇒マムシ平⇒安曇沓掛駅  晴れのち曇り

起きてテントから顔を出すと、針葉樹の向こうが赤くなっていた。あそこに餓鬼岳があるんだなというのがわかった。きのうまでは全く展望なかったもんな・・・。今日は降りるだけだがヤブが曲者だし、車道歩きが長い。なんと言っても安曇沓掛の駅まで歩かねばならない。

1750mテン場(7:45)⇒1662m(8:25)⇒1500m付近(9:30)⇒マムシ平先の橋(11:00〜10)⇒あづみの公園付近(12:40)⇒安曇沓掛駅(14:00)

一応ワカンを履いて歩き始める。・・・が、バンドの変なとこがほどけてしまい、すぐにはずすことに。しばらくで敵は雪からヤブになる。1662mから先のシャクナゲ地獄はやっぱり地獄。よくこんなとこ登ってきたなあ・・・と感心してしまう。最大のシャクナゲ密林地帯の途中、ポッカリと視界が開ける場所がある。といっても下の写真くらいなもんだが・・・。今回最高のビューポイントなのでした。餓鬼岳から東沢岳、東餓鬼岳、馬羅尾山に囲まれているというのが初めて実感できた。

 
赤い部分に餓鬼岳があります  テン場にて 4日間のベストビューポイント  初めて見た餓鬼岳

シャクナゲ地獄から抜け出したら次は笹の滑り台。摩擦係数の少ない雪と笹のコラボ。まあ何度滑ったことやら。ストックが木に引っ掛かった状態で滑り落ち、片手で宙ぶらりんになったりした。尻もちは仕方ないので、頭から突っ込まないようにだけ気を付けた。頭から行くと転がり落ちてしまいそうなので・・・。

 
東沢岳のほう 下りも手強いシャクナゲ

尾根筋の金網が出てきて、いよいよ最後の斜面下り。登る時も急だったが、下りで見るとなおさら急。アイゼンかなあ・・・と思いつつも少し下ってみるがダメ。すぐにアイゼン着ける。アイゼン着けたところで雪と地面が締まってれば有効だけど、晴れた午後ということで、雪はグサグサで地面は柔らかい腐葉土状。アイゼンも関係ない感じ。アイゼンはすぐに腐葉土の団子になる。冷や冷やもんで降りてきました。取り付きはもう少し上の方が、木が密になっていて楽かもしれない。

 
大町が見えます 下りはアイゼンで

林道に降り着き一安心はまだ早く、倒壊した橋を渡らねばなりません。木の折り重なり具合からして、帰りの方が難易度が高かった。あとは延々と車道を歩くのみ。歩き出しのあづみ野公園あたりまで5キロ、安曇沓掛駅までは9キロ也。雪が深いうちはよかったが、里に近付くにつれ雪が減り、冬靴の苦痛が・・・。

 
倒壊した橋 あの尾根を降りてきました

里に降り、振り返ると餓鬼岳が見えた。次に振り返ったら餓鬼岳は雲の中。みるみるうちに雲が増えてきて、有明山あたりも雲の中に。天気予報通りですな。最後の舗装路4キロは足が痛くてヨレヨレでした。15分待ちで電車が来た。最寄りの有明駅までは5駅。車だと車に着いた時点で下山の気分だけど、電車は家に帰るまで下山の気分にはなれませんね。最後の登り(3F)を登ってやっとおしまい。

 
餓鬼岳に雲が・・・ 安曇沓掛駅

残念ながら積雪期の餓鬼岳登頂はならなかったけど、久しぶりに4日間雪山に入れて楽しかった・・・かな。次回挑戦することがあれば、経験からプランを立てられるので、かなりの確率で餓鬼岳に到達できるはずです。泊まりの山から降りていつも感じるのは、家の布団が気持ちいい!ってことです。







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