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中房川 北中川谷 沢登り





記録のない初見の沢の難しさを痛感 登り応えのある沢でした


 山域  北アルプス 中房川 北中川谷
 山行日時  2010年8月7日(土)〜8日(日)
 登山形態  沢登り
 メンバー  abu-chan、ko-chan、Sじー、Uya、awawa
 温泉  穂高温泉郷 しゃくなげ荘(400円)


ガイドもなけりゃ記録もない。中房川の支流、北中川谷に行ってきました。北中川谷は中房温泉のすぐ下流から分かれ、流域は燕岳と大天井岳の間にある大きな尾根と、夏道のある合戦尾根に囲まれた範囲。立地からして便が悪いわけではないのに記録がない・・・。ある程度人は入っているとは思うのだが・・・。平凡なのか、遡行価値がないのか・・・?

■8月7日(土) 中房温泉⇒北中川谷⇒1590m付近テン場  くもり時々晴れ

この谷は数年前から目を付けてはいた。何度か計画しかけたけど、実現してなかった。今回、エゲレス留学するUヤの壮行会、さらには山岳会の企画物も兼ね、やっと北中川谷が実現(?)。少々甘く見ていたというか、記録のない初見の沢の難しさを痛感したというか、なんというか・・・。最後は合戦尾根に逃げる格好にはなったけど、、経験値が一つ上がる沢登りになりました。その時は色んな意味で大変だったけど、あとから思うと沢自体のスペックはなかなかのもの。いつか主稜線までやっつけに行く価値はあると感じた。ま、そのうちに。

中房温泉駐車場(10:40)⇒有明荘前入渓(10:50)⇒二俣(11:40〜12:00)⇒1590mテン場(13:30頃)

8時半に穂高の西友に集合。長岡からawawa、名古屋からUャ、長野からko-chang、地元からSg、abu-changが集結。最近エスカレート気味になっている焚火宴会の食材を買い込む。そして中房温泉へ。夏山シーズン真っ盛りの土日はすでに路駐であふれかえっていた。それでもダメモトで駐車場に行ってみると、2台続けて空きスペースがあってラッキー!駐車場で沢の支度をして、いざ出発。

 
入渓直後  花崗岩にきれいな水が映える ひとつ目の滝(3m)

有明荘のところから踏み跡に入り、中房川に降りる。1つ堰堤を巻き降り、すぐに取水施設。ここから作業道が続いていて、それを辿ってみたら尾根を乗り越して中川谷へと降り立った。燕岳、大天井岳といえば花崗岩。谷も花崗岩の岩盤で明るく、水もきれい。だいたい想像通りの渓相だったが、水量の割に谷が細い感じがした。

 
すぐに取水施設 思ったよりも良い渓相です!

中房川から北中川谷と南中川谷の出合までの間は、「中川谷」でいいのかなあ・・・?ま、中川谷にしとくとして、中川谷を少し登ると堰堤があり、その先に3mくらいの小滝。そのすぐ先に取水施設があり、左の踏み跡から巻く。こーちゃんのみ石垣の堤を直登。人工物はここでおしまい。二俣までは小滝が数個あるくらいだが、岩盤が出ているところが多く、飽きる感じではなかった。

 
3mナメ 3mナメ

30分ほど遡ると北中川谷と南中川谷の二俣。南中川谷は大天井岳周辺が水源。こっちも興味はあるけど、北向きで雪渓が多いのと、1泊2日では日程的に厳しそうなので、なかなか実行には移しにくいところ。南中川谷に入ると、3〜5mの滝やナメ滝が程よい間隔で出てくる。しかし、それもすぐに終わり、谷がS字に曲がる手前から平凡に。

 
5m一部ヒョングリ 5mトイ状

S字が曲がり終わったところから、すでに本日のテン場探し。まだ3時間も歩いてませんが・・・。地形図では広くなっているが、快適なテン場といえる場所はない。しばらくでまた細くなるので、引き返して一番マシなところに決定。北中川谷はあまり河原が発達してなくて、テン場にはあまり恵まれない川のようだ。とくに、これより上は大人数での泊まりは厳しそう。

 
食材が次々と串に刺さります ベーコンのかたまり

人が入らない沢なので、当然マキはしこたま。猛暑が続いているので、マキはカラカラに乾いております。あっという間に着火。普通は真ん中だけ燃える長いマキも、今日は端まで燃え尽きてしまうほど。山ほどあったマキも、みるみるなくなっていきます。

 
シシトウをバラ肉で巻きました 食べごろです!

さてさて、今回のメインテーマはUャびっちの壮行会。酒も食材もしこたまあります。最近のブームは串焼き。楽しいし、美味しいし、ジワジワと出来ていくので長時間宴会にはうってつけです。この日のヒットはベーコンの塊と、シシトウのバラ肉巻きかな。一段上の台地にタープを張り、5人はそこで寝たのですが、酔っぱらったワタクシは焚火の横でそのまま就寝。2時ごろ目を覚ますと焚火が消えかかっていたので再着火。1時間ほど1人焚火を楽しみ、また寝たのでありました。


■8月8日(日) テン場⇒奥の二俣⇒合戦尾根⇒中房温泉  くもり

5時頃になってawawaが起きてきた。1人また1人と時間差で起きてくる。テキトーなのが沢の良いところ(?)。日曜日は快晴かと思いきや、空はほとんど雲に覆われている。雑炊を食べて7時に出発。今日は主稜線まで登り詰め、合戦尾根を下るという長丁場。一応狙いは大下りのコルに定めていた。

テン場(7:00)⇒1766m二俣(8:30〜9:20)⇒約1880m二俣の高巻き2ピッチ(10:10〜11:55)⇒約2100m雪渓下(13:45)⇒ルンゼへ(14:20)⇒合戦尾根2600m付近(16:25)⇒中房温泉(18:35)

テン場からしばらくはゴーロ。平凡だったが8m滝が現れ、5m滝が出てきて、意外にもここでロープ使用。そのあとは二俣(1766m)まではまた平凡なゴーロ。すぐだと思っていた二俣まで1時間半かかった。ま、ロープを出したからな・・・。二俣を左俣に進みたいところだが、左俣の先には圧倒されるような滝が見える。簡単には登れそうには見えない。行ってみてダメなら右俣に変更だ。

 
8m滝 5m滝


左俣の滝は15mくらいはありそうで、近寄ると2段になっていた。さらに近付いて見てみると選択肢は2つ。巨大流木と水流の間を直登する案と、右の斜めったスラブをトラバースして巻く案。先に巻きを偵察。行けなくはない感じだが、かなり悪そう。装備不足もあり、巻きは断念。直登も手強そうで、仮に登ってもこの先どうなってるか不安なので左俣も断念。残念・・・。もともと左俣を考えた理由は、数年前に大下りあたりから下を観察していて、簡単に詰め上がれそうな感じだったことと、ウチのベランダからよく見えるということ。また、右俣は上流に燕山荘と合戦小屋があるから・・・ということ。

 
岩盤が出てくると楽しくなる 左俣に入ってすぐに滝は通過困難で引き返す

少し戻って再び二俣へ。右俣だと行き詰まったとしても、合戦尾根に逃げることができるので、少しは安心感がある。右俣を進むと3mの小滝があり、その先に15mくらいの滝が出現。こっちにもあったか・・・。水流の左壁を登るが、少々気持ち悪い感じだったので、上がってからロープを投げて確保。

 
右俣すぐの15m滝は水流左を登る(ロープ) 同左
 
5m滝 二俣から先は連瀑です!

次に5mの滝があり、右から支流が滝となって出合う。合戦小屋からの沢だ。この沢をエスケープに使うことも考えていたが、最初が40mくらいの滝になっているので、とりあえずは先に進むことにした。しばらく平凡だったが、前方に連瀑が見えてきた。出てきますなぁ〜。一段目を登ると1:2の二俣。左は為右衛門吊岩から流れ落ちる沢。先には見るからに直登不能、高巻き困難な20mくらいの滝が。まあ、左には行かないからいいけど・・・。

 
1880m二俣 左俣の滝1880m二俣 右俣の滝 1880m二俣 左俣の滝


とはいうものの、右にもハングった10m滝がある。この滝はなんとか左から巻けそう。でも、悪そうなのでロープを引いて登る。最初の滝を登ったところでピッチを切る。この滝の上にも10mの滝があり、こちらも直登は無理。2ピッチ目の巻きに入るが、見た目よりもかなり悪い。出だしの凹角も悪かったし、その上のリッジ状がさらに悪かった。細かいスタンスに立ち込む時に度胸がいった。中間が取れてなかったら厳しかったかもしれない・・・。このあとの2手も悪く、灌木に捕まってやっと一安心。ここから右にトラバースすると、運よくピンポイントで落ち口に出た。登りすぎたらさらに1ピッチ+懸垂になるところだった。

 
同上 高巻き2つ目の滝
 
10mの滝を2つ2ピッチで高巻くが渋かった・・・ 高巻き直後の8m滝

落ち口に出てホッとしていたらko-ちゃん到着。そのあとが来ないのでkoちゃんが見に行くと、確保がいるとのこと。落ち口からのビレイは無理なので、トラバースのところまで戻って残りの4人を確保。結局、この高巻き2ピッチで1時間45分を要した。同時に焦りが出てきた。

     
ミヤマアキノキリンソウ タカネナデシコ ダイモンジソウ
     
シモツケソウ ハクサンシャジン ハクサンフウロ

この先も滝が出てくる出てくる。5mくらいの滝が連続するが、シビアな滝も出てくる。お助け2本繋ぎで引っ張り上げたり、10mくらいの滝でまたロープを使ったり。時間は刻々と進んでいく。本日夏道で登っているchikaねーさんと合流する予定だったが、もうすでに到底無理な状況。

 
5m滝 このあたり3〜5mクラスの滝が連続
 
倒木付きの5m滝 なかなかの連瀑帯です

次の難関は15m滝。遠めには登れそうに見えなかったので、左岸の高巻きルートを観察しながら近付く。真下まで来ると水流左になんとかルートを見出す。かなり立っていたので荷物を背負ってると無理。空身で登るけど、3分の2登ったとこで一歩が怖い。abuちゃんの腕をホールドになんとか立ちこんで抜けた。ロープで確保したかったが、水流の反対側にしか支点がみつけられない。落ちたら水流にさらされる状況なので断念。結局、左岸を高巻く。最初から巻いとけばよかった・・・。大きなタイムロスだった。

 
トイ状滝 15m滝は左を登るもロープ使えず高巻き

この先は少し順調に進んだかと思ったら、今度は雪渓が現れた。2100mくらいの二俣付近だ。ウチのベランダからも雪渓があるのは見えていたので、意外ではなかったが、出てきて欲しくはなかった。1つ目は下をくぐり、2つめは上を歩く。ここで思案。このまま主稜線を目指すか、右の合戦尾根に逃げるか・・・。どちらも標高的には変わらないけど、合戦尾根に出た方が、下山はかなり早くなる。また、本流を詰めるとさらにアトラクションが出てくる可能性がある。恐らくそう長くは続かないだろうけど。とはいえ、時刻はすでに2時。4時には稜線に出たい。となると合戦尾根に逃げるしかないでしょう・・・が協議の結果。あとは、このルンゼが登りやすいことを祈るのみ。

 
ここはくぐるしかない 途中で上に上がる

ルンゼはあっという間に水涸れ。早くも水がなくなった。補給しておく。水流はなくなったものの、沢形は上まで続いていた。時々ややこしい場面に出くわすが、水流がないのが幸いして、なんとか登ることができる。ルンゼ登りになってからは疲れてしまって、最後尾をマイペースでついて行った。地形図にある「2400」の右を登ったと思われる。最後は少しヤブになったものの、終始沢形は道のようになっていて、500mを2時間ほどで登りきることができた。稜線に出てみんなでハイタッチ!時間は4時半前。これなら余裕で明るいうちに下山できる。ホッとした。みんなに感謝!

 
ここでタイムアウト!  合戦尾根へのルンゼへ 途中のアリ地獄地帯

天気は曇りだったけど、餓鬼岳とか見えていた。なんだか景色がすごく爽やかに感じた。合戦小屋でひと休み。まだまだ登ってくる人がいる。燕山荘まではそんなにないけど、疲れてたら長い道のりだろうなあ・・・。他人ごとではないんだけど・・・。合戦尾根は一気に高度を下げるので、標高差のわりに早く降りれる。最後の30分はかなり疲れた。11時間30分の長丁場。みなさんお疲れさんでした。有明荘で温泉の予定だったが、5時で日帰り入浴は終了でガックリ・・・。しゃくなげ荘までガマン。穂高で解散となりました。

 
合戦尾根に出た!  向こうは餓鬼岳 向こうの黒いのは有明山

ガイド本なし、ネットに記録なしの北中川谷。ちょっと軽く考えていたことに反省。情報のない沢は万全の装備で臨まないといけませんね。記録等があれば、最終的にどこを目指すのかハッキリしていて、難易度はともかく忠実に辿ると抜けれるという安心感がある。しかし、記録がないと地形図のみで予想し、実際に現場で局面にでくわしてルートを判断することになる。予定していたルートに通過不能な滝が出たりすると、変更を余儀なくされることになる。たとえ無理して通過できたとしても、その先に何が眠っているのかもわからない。まさに冒険といったところ。ただ、時間が迫ってくると、それが焦りに変わってしまう。今回はメンバーの足が揃っており(ボクは一番引っ張った・・・?)、精神的にも強い人ばかりで助けられたが、そうでなければプレッシャー倍増だっただろうなと推測される。このての沢は人数絞って、充実した装備で臨むべきだと痛感いたしました。反省。

まあ、稜線に抜けるまではプレッシャーの方が大きくて楽しむ余裕はなかったけど、沢自体のポテンシャルはかなり高いと思われます。単調な部分は少しはあるけど、予想よりもはるかにたくさんアトラクションがありました。とくに二俣(1766m)から上。花崗岩の渓相は悪くないし、スリルのある滝も多い。今回遡行したルートを後で振り返って級を付けるとしたら、4級くらいになるのかな・・・。3級上よりは難しいから、4級下くらいにしとこうか・・・。ただ、遡行している最中は5級並みのプレッシャーを感じながら登っていました。快感と不安が交錯しながらですが・・・。

この山域には記録らしい記録がない。なので、あまり遡行対象にならない沢なのかと思っていた。けれども、今回遡行してみると、かなり手応えのある沢だということが判明。記録のあるメジャーな秀渓を楽しむ傍らで、地元のこのエリアを探検してみたいという気持ちが大きくなった。そのためにも、もっと力を付けなければ!
  
 遡行図(クリックで拡大)

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