山登りのページTOP 山行記録 山スキーのページ 沢登りのページ 北アルプス全山縦走 南アルプス全山縦走 リンク PLOFILE |
今年のお盆は名古屋ASCのK子さんから声が掛かり、黒部川支流の北又谷本谷に行くことになった。北又谷のおいしい所だけを遡行して、黒岩谷を詰めるという2泊3日での行程が主流のようだが、敢えて本谷を犬ヶ岳まで詰める、3泊4日で計画。いやなタイミングで発生した台風も、うまいこと中国のほうに向かい、はじめの2日は安定した晴天が続く見込み。
■8月12日(木) 晴れ 越道峠⇒北又谷⇒恵振谷出合前夜のうちに名古屋組はウチに来て仮眠。朝4時に自宅を出発し、T世さん(折立から扇沢に縦走予定)を有峰口まで送った後、タクシーを予約してある朝日町の泊駅へ。小川温泉を経由し、1時間弱で出発点の越道峠に着いた。峠はちょっとした広場になっており、林道開通記念の石碑が立っていた。
天気は快晴!沢に入るまでは曇っててくれたほうがいいくらいだ・・・。石碑の脇から踏み跡を追う。どんな踏み跡かと心配していたが、ちょっとした登山道並みの踏み跡がついていた。尾根道を右へ左へクネクネと曲がりながら1084mPの基部まで進む。ここらへんから道はややこしくなり、枝道も出てくる。下降点と思われる沢の源頭に着き、ハーネスとヘルメットを装着。さて、いよいよ北又谷に向けて下降だ!・・・の前に念のため確認してみると、ダム湖へと降りてしまう沢の源頭にいることに気付く。危ない危ない・・・。少し登り返して、1つ尾根をやり過ごし、やっと魚止の滝下に落ちる沢の源頭に立った。
むさくるしいアプローチから比べると、優雅に流れる本流は天国のようだった。心配していたアブも1匹2匹見かけるだけで、とりあえずはホッとする。大群で押し寄せるアブのことを、富山側では「オロロ」と言い、新潟側では「ウルル」と言うようだ。天国の本流を歩き始めるが、天国は束の間。わずかで魚止の滝が現れる。1995年の洪水の前までは7mの落差があったようだが、今は1mそこそこの落差にまで埋まってしまっている。しかし、突破は簡単ではなさそう。
奔流の流れるゴルジュをきわどいヘツリで越えると、出ました大釜!水流が大きな釜を時計回りに勢いよく渦巻いていた。瀑水左のリッジに泳いで取り付くことに。まずK子さんがトライするが2度失敗。リッジの直前までは浮いてるだけで流れが運んでくれるが、手を出そうとするところで、流れが強くなって岩に取り付けないようだ。
■8月13日(金) 晴れ 恵振谷出合⇒黒岩谷出合
|
恵振谷出合(7:00)⇒又右衛門滝巻き終わり(8:40)⇒ミズカミ谷出合(9:10)⇒白金滝7m(11:00)⇒漏斗谷出合巻き終わり(11:50)⇒3段滝(12:10)⇒巻き終わり(13:40)⇒黒岩谷出合(15:00) |
対岸から見ると急そうに見えたリッジは簡単に登れたが、そのうえのヌルヌルの草付がかなり悪かった。草付きを登り切ると、わりとハッキリした踏み跡が出てくる。通常ならできるだけ低い所でトラバースできる突破口を探りながら進むところだが、今回は踏み跡を信じてグイグイ登っていく。こんなに登ってもいいのかなあ・・・と思うくらいに高度を稼ぐ。150m以上は登ったと思うが、やがて台地状になりトラバース開始。対岸に気を付けながら、踏み跡をはずさないように進み、対岸に又右衛門沢が出合ったところで懸垂して沢に降りた。
|
|
|
沢に降り立った地点より下流は、良くは見えないがかなり悪そうだった。この先のゴルジュは胸まで浸かったり、ヘツったりしながら突破。淵と切り立った花崗岩の側壁がきれいなところだ。標高が低いためか水はとくに冷たいとは感じない。水に入るのも苦にはならない。天気が悪かったらそうはいかないだろうが・・・。やがて谷は開けて河原状になり、左からミズカミ谷が出合う。このあたりには良いテン場がチラホラあった。
|
|
|
また谷は狭まるが、プレッシャーのかかるような場面はしばらくなく、美渓の北又谷を存分に楽しみながらの歩きが続く。いつもデジカメを首にぶら下げているが、北又谷は浸かる場面が多いので、ザックにしまう機会が多い。胸まで浸かるくらいの時は、デジカメを口にくわえていた。ただ、つまずいたりしたらアウトだ。
|
|
|
グッと谷が狭くなり、タイトなS字の先に7mの白金滝が・・・。通過不能で右からの高巻きとなる。ここも大きくはないが、いやらしい高巻きだ。懸垂で降りたところが漏斗谷の出合になっていた。漏斗谷はほぼ1:1の二俣で、水量は二分されグッと減る。長持淵はどこだかわからないままに通過。幅の狭くなったトロ場はあったが、それだったのか・・・?
|
次の難関は3段の滝。1段目はかろうじて右岸をヘツることができたが、中段は全く手が出ない。1段目を登ったところで、左岸のナイフリッジ状の岩から高巻きに入る。ナイフリッジは馬乗りで越え、そこからルンゼを登るが、上部がいやらしくザイルを使用。登りでザイルを使ったのは、魚止の滝以来か・・・。 下降点を探しながらトラバース。急斜面に斜めに生える潅木をつかみながらのトラバースは、腕がパンプ寸前だった。手を離すと下まで落ちてしまうので必死だ。ここも最後沢に降りる時は懸垂下降となった。 |
北又谷は側壁が20mくらいの垂壁になっていることが多い。そのため、高巻きからの下降はほとんどが懸垂下降になる。また、北又谷には10mを越えるような滝はない。しかし、直登不能の滝が出てくると、ほとんどが草付の悪い大高巻きとなってしまう。この悪い高巻きも、北又谷のグレードを上げているのかもしれない。
|
3段の滝を越えると谷は開ける。ここで水量が減ったことを実感。左の写真はフリークライマーM野君がリード。右の乾いた快適な岩場を空身で登った。 ここまでずっと白い花崗岩の側壁だったが、黒岩谷の手前で岩質が変わり、黒っぽい岩になった。なんとなく北又谷は終わったなあ・・・と感じた。なるほど黒岩谷で北又谷を終わらせるパーティーが多いのもうなずける。 テクテクと河原を歩いていると、あっけなく黒岩谷の出合に到着。出合は広い河原になっており、絶好のテン場。迷わずここで今日の行動を終える。 |
例によってK子さんは岩魚釣りへ。サルガ滝の釜まで遠征して、1人当たり2匹のおかずを釣ってきてくれた。今日も昨日とは別人だが、少し上流に先客(若い3人組)がいるようだ。黒岩谷の出合はややマキが少な目。まあ、1泊分集めるぶんには余裕だ。残されたアルコールをチビチビと飲み、岩魚のバター焼きをつまむ。あっという間に暗くなり、次に時計を見たのは11時を過ぎてからだった。整地された河原にタープを張って寝た。
昨日で核心部を全てクリアし、気分的には既に終了モード。くもりだった空も、出発する頃から小雨となった。きのうまでの快晴で既に満腹だったので、今日のこの小雨はそう気にならない。かえって涼しくていいくらいかも・・・。
黒岩谷出合(7:15)⇒サルガ滝(7:25)⇒二俣(9:50)⇒栂海新道稜線(13:15〜50)⇒犬ヶ岳(14:00)⇒白鳥小屋(17:50) |
|
黒岩谷出合から10分ほど河原を歩くと、サルガ滝が現れる。この水量にしてこの釜の大きさはすご過ぎる。又右衛門滝の釜と大して変わらない。ここも登れないので高巻きとなる。右の踏み跡っぽいところから取り付く。下降は懸垂になるが、この高巻きは難しくはなかった。 サルガ滝の上流は延々と平凡な河原が続く。登山道並みのスピードでどんどんと進んでいく。水量は少ないのだが、相変わらず側壁は発達しており、川幅も広い。増水すると川幅一杯で流れるんだろうなあ・・・。途中、崩壊後の雪渓がひとつだけあった。 |
二俣までは傾斜のない穏やかな流れが続く。二俣を右に進むと、徐々に傾斜が増してきて、小滝もチラホラト現れてきた。幅2mくらいのゴルジュも出てくる。乏しい水量なのに、腰まで浸かって突破した淵もあった。やがて水は細くなり、2.5Lの水を補給しておく。
|
2.5キロ増しのザックになってからが大変だった。これでもかというほど小滝が続き、中にはかなりテクニカルな滝もあり、そう簡単には詰めさせてくれない。最後の二俣を右に進路を取り、約1550mのコルを目指す。 その先に難関が待ち構えていた。切り立った小滝をK子さんが右の草付きから巻きにかかるが、かなり悪そう。K子さんが登ったあと、ザイルを投げてもらい、滝を直登することに。ところが滝は2段になっていた。仕方ないので1段目はフリーで登る。ホールドが細かく、ヌメヌメだったため、緊張の登攀となった。2段目はさらに難しかったが、ここは確保されていたのでよかった。残置シュリンゲにぶら下がりながらなんとかクリア。このあともまだ小難しい滝が現れる始末だった。 この沢は水源がかなり高いところにある。水を補給するポイントを誤ってしまい、難しい滝をわざわざ重荷で越えるハメになってしまった。 |
ツメのヤブ漕ぎもなかなかのもの。北又谷は簡単に終わらせてくれなかった。急斜面を逆目に生える笹、ダケカンバ、シャクナゲ、ハイマツに苦しめられる。最後は転がり込むように栂海新道の通る稜線に飛び出した。
時間はまだ1時半。栂海山荘まではわずかの距離。アルコールが十分だったら栂海山荘でもよかったが、アルコールなしではヒマを持て余してしまいそう。明日が楽になることも考え、頑張って白鳥小屋まで駒を進めておくことにした。
北又谷を詰めた後の、アップダウンの多い栂海新道は予想以上に苦しかった。明るいうちに着けばいいやと、ちょっと歩く度に休憩していた。下りの筋肉はまだ残っていたが、登りの筋肉は既に限界・・・。救いなのは暑くなかったこと。ずっと濃い霧の中、そんなに暑さを感じることなく歩くことができた。
白鳥小屋には6時前に到着。1Fに3人、2Fに1人の先客がいた。2Fにお邪魔する。小屋に着いてしばらくで大雨となった。良いタイミングで着いたもんだ。あと30分遅かったら、惨めな思いをしていたことだろう。遅い時間に着いたので、迷惑のかからないようすぐに夕食。食べたものから順番に寝床に入った。夜中は断続的に土砂降りとなっていたような・・・。
5時過ぎに目を覚ますが、外は雨模様。雨は降っていたが視界はあり、頚城の山々、朝日岳方面、剣岳などが小屋の窓から見えていた。晴れて暑くなるよりもいいか・・・と考えていた。コーヒーを飲んで、朝メシを食って、ウダウダとしていた。他のお客さんが出発したあと、ようやくパッキング開始。そのうち雨はやんで、海のほうが明るくなってきた。
白鳥小屋(7:15)⇒親不知(11:35) |
雨の上がった栂海新道を歩き始める。1200mそこそこの山にしては涼しい。北から回復ということは、ゆうべの雨は前線通過によるものか・・・?秋の空気に入れ替わったのかもしれない。おかげで暑さに苦しめられることなく下山することができた。暑さには苦しまなかったものの、距離の遠さと登り返しには苦しめられた。
|
6年前に北アルプス全山縦走をした時と同じ、親不知がゴール地点。ひどい靴摺れに悩まされながら、ヨレヨレになって親不知に降りついたことが今でも鮮明に思い出される。 親不知観光ホテルで風呂に入り、4日分の汗と沢臭を落とす。そのあと食堂で牛丼と生ビールを腹に入れて、ホテルの人に親不知の駅まで送ってもらった。泊駅まで電車に乗り、車を回収して今回の北又谷本谷の川旅を終えた。 |
4日間の行程中、核心となるはじめの2日が快晴に恵まれたことで、今回の川旅は充実したものとなった。一日遅れて入渓していたとしたら、昨晩の大雨を河原で食らハメになり、不安で不快な夜を過ごしたことだろう。今の自分の実力で、この5級の北又谷をスムーズにこなせた要因は、好天とあとのメンバー2人のおかげである。感謝感謝・・・。ここ一番の突破力と、的確な判断力を身につけて、さらにグレードの高い素晴らしい沢に挑戦してみたい。
HOME>沢登り | 山登りのページ |