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穂高の紅葉2006 −涸沢&横尾谷右俣−






横尾谷右俣カール


 山域  北アルプス 穂高連峰  
 行程  1日目 上高地⇒横尾⇒涸沢
 2日目 涸沢〜横尾谷右俣〜横尾尾根コル〜槍沢ババ平
 3日目 槍沢ババ平⇒上高地
 山行日時  2006年10月9日(祝)〜10月11日(水)
 天気  1日目 晴れ  2日目 晴れ 3日目 曇りのち雨  
 登山形態  紅葉トレッキング
 メンバー  T世、
 温泉  





今年の北アルプスの紅葉は1週間程度遅れているらしい。北海道で大雪山の素晴らしい紅葉を拝み、北アルプスでも紅葉を見るチャンス。体育の日3連休の前半は、台風並みに発達した低気圧が寒気を引き込んで、北アルプスの稜線は軒並み雪が積もった。おかげで出発は1日ずれ込んだが、雪景色のオマケ付き。ただ、紅葉のほうはまだ早いのか、またデキが悪いのか・・・。イマイチであった。雪景色は最高!

■10月9日(祝)   晴れ  上高地⇒涸沢

前日は一日冬のような空で、常念岳や蝶ヶ岳あたりも初冠雪。下界でも冷たい雨の降る一日だった。翌日は朝からスカッと晴れわたり、雪化粧した北アルプスが輝いていた。とくに後立山は雪が多いし、雪が付くとカッコイイ!今日は3連休の最終日。もう涸沢もダダ混みってことはないだろう。6時半ごろの余裕の出発。沢渡からは十石山にも雪が積もっているのが見えた。

上高地(8:25)⇒明神(9:10)⇒徳沢(10:00)⇒横尾(10:55)⇒本谷橋(12:15)⇒涸沢(14:30)

上高地から見る穂高の峰々は、降りたての雪で純白に輝いていた。今日来た人は大当たりだ。観光客のみなさんも「ワァー!」なんて声を上げていた。きのう涸沢に入った人は、きのうは最悪の天気だっただろうが、今日はそれが何倍にも報われる景色を拝んでるんだろうなあ・・・。昨日スタートor今日スタート、どっちがよかったかな・・・?

明日の登る予定の横尾谷右俣
屏風の頭
涸沢下部はまだ青々としている

連休最終日ということで、降りてくる人がメチャメチャ多い。横尾までの広い遊歩道でさえ、すれ違うのにストレスを感じるほどだ。それでも悪天だった連休なので、入込みは少ないんだろうな。横尾までの試練の横歩き。白くなった明神岳、前穂高岳、屏風などを見て、ウンザリする気持ちを紛らせた。

今日は約2年ぶりとなる冬靴。昨年はスキーに明け暮れ、一度も履かずじまいだった。夏の靴で来るつもりだったが、朝大天井岳の雪の積もり方を見て、急遽冬靴にしたのだった。靴の形が変わったのか、足が変わったのか、足がイタイイタイ。さらに左足の付け根が痛くなって、涸沢までは苦痛の登りとなった。

涸沢ヒュッテ下からの北穂高岳
日が陰った 左が奥穂、右が涸沢岳

紅葉のほうは、本谷橋を渡ったあたりから色付き始める。屏風の頭の斜面と北穂の斜面は、黄色主体だが彩は良かった。肝心の涸沢の谷の紅葉は、まだ早いのか・・・、ハズレなのか・・・イマイチ。ヒュッテの下辺りの一番いいところでは、まだ青々としたナナカマドの葉っぱがたくさんあった。そうこうしているうちに、東向きの涸沢は日陰となってしまった。あ〜あ・・・。遅い出発と足痛が仇となってしまった。

それでも涸沢のロケーションは天下一品!雪景色の穂高の岩峰には残り物の太陽が当たってきれいだし、屏風の斜面には遅くまで日が当たっていた。景色はいいが、日の陰った涸沢は寒い寒い!外には居られず、テントの中で時々外の景色を見ながら過ごしていた。前日寝不足だったのもあって、7時過ぎには眠っていたような・・・。


■10月10日(火)   晴れ   涸沢⇒横尾谷右俣⇒槍沢ババ平


涸沢は朝がお勧め。日の出前から刻一刻と繰り広げられるドラマが素晴らしい。日の当たる前は白黒の岩峰が、まず稜線から日が当たり始める。そして、それがだんだんと下に降りてくる。涸沢のテン場あたりにも日が下りてくるのは、それからずっとあと。ヒュッテ下の谷に日が当たるのは、さらに時間が経ってからとなる。

涸沢(8:05)⇒本谷橋(9:15〜30)⇒涸沢出合(9:55)⇒二股(10:40)⇒カール(11:45)⇒横尾尾根のコル(14:05)⇒槍沢ババ平(16:25)

テン場に日が当たり始めると、それまで寒かったのがウソのようにポカポカ。涸沢の谷に日が当たるまでゆっくりしたかったが、今日は横尾谷の右俣を登って、そのあとあわよくば槍までと考えているので、そうそうゆっくりはしていられない。ナナカマドが見頃の部分はまだ日陰。日が当たるまで待ちたい気持ちもあったが出発。

朝日を浴びる涸沢岳と月
新雪と紅葉

1時間もあれば本谷橋まで下れると思っていたが、そうは問屋が卸してはくれない。平日といえども、ここは日本有数の紅葉名所。本谷橋の少し手前で渋滞に吸収されてしまった。こうなってしまったら、もうあきらめるしかない。途中で沢に向けてガレを下る手もあったが、さすがに人目が気になった。

新雪の奥穂高岳
涸沢小屋と北穂高岳

本谷橋でこの喧騒ともおさらば。さっきまでの人混みが幻だったのかと思えるくらい。まあ、道はないから当然といえば当然。横尾谷には登山道はないが、結構人は入るので踏み跡はある。横尾谷は巨岩が点在するゴーロの谷。左岸のゴーロを歩き、水流や巨岩で行き詰ったら、左岸の草付きには必ず巻き道が付いている。ひたすらこれを繰り返しながら高度を上げる。

横尾谷右俣の下部
左俣は細くて暗い感じ
右俣上部  あの先にカールが待っている

涸沢出合を分け、横尾谷の左俣を分け、右俣へと入っていく。左俣は2002年に登っているが、なかなかインパクトのデカイ谷だった(後述)。谷がだんだんと細く、傾斜も増してくる。見えている一番高いところを登り切ると、カールに出るなというのがわかった。さて、どんなカールへの飛び出し方をするのか楽しみだ。

カールに出たところ
カール中央部より

カールへの飛び出し方は、左俣に比べると地味。右俣のカール自体、完成度は低いようで、だらだらと下がってきている。左俣は飛び出た瞬間にカールの全貌が見えるが、右俣のほうはさらに先にモレーンがあって、カール全体を見渡すことができない。途中で潅木とハイマツの藪を漕いでからやっと本物のカールに出るといった感じだった。

季節外れのチングルマ

今年は残雪が多かったのか、7月にさっさと咲いて散ってしまうはずのチングルマが咲いていた。一輪咲いているだけならまだしも、群落を作って咲いていたのにはビックリだ。10月の2300mだぞ・・・。しかも、周りにはおととい降った雪が残っているというのに・・・。


北海道でも紅葉の時期に夏の花が咲いていてビックリしたが、こっちの方がはるかに異常だ。天変地異の前触れなのか、日本沈没の前触れなのか・・・?周囲を見てみると、まだ青々とした草がたくさん残っていた。通常なら秋枯れの草原なのに。紅葉と夏が同居しているようだった。

カールと横尾尾根
カールと南岳

カールの中央にはまだ雪渓が残っていた。ズルズル滑りながら雪渓を詰め、目指すは横尾尾根のコルだ。氷河公園の登山道が横尾尾根に登りついた部分だ。昨年横尾尾根のコルから右俣を見下ろした時、踏み跡がしっかり付いているかのように見えた。しかし、コルからのルンゼンの下部に来ても、踏み跡らしきものは見当たらない。歩いた形跡はそこらじゅうにあったが。傾斜はそれほどでもないが、不安定なガレのため、荷が重いと辛い。コルへは2本のルンゼが伸びているが、流れで右のルンゼを詰めた。左の方が楽だった気もするが、見えなかったのでなんとも言えない。

カールの先にそそり立つは屏風岩
ルンゼを詰めると北穂が圧倒的な姿を現す

T世さんはルンゼの登りあたりからペースが極端にダウン。というのも、「唐辛子を足につけて寝ると暖かい」というので、そうやって寝たところ、靴を履いて温まると痛くて痛くてしょうがないらしい。顔をしかめながら登ってきていた。休憩の度に靴を脱いでいた。みなさん、くれぐれも唐辛子には気を付けて下さいね。

横尾尾根のコルから南岳
横尾尾根のコルからの槍ヶ岳

コルに上がるとドーンと目に飛び込んで来るのが槍ヶ岳。さあ、目指すはその槍ヶ岳だったが、時間はすでに2時。もう無理だ。殺生あたりを今日のテン場と考えていたが、それも無理っぽい。一番近いテン場は南岳か。南岳で泊まって、明日稜線からの景色を見て下山ってのもいいな。念のため天気予報をチェック。すると、なんと明日は雨!出る前の予報では、何日間か晴れ続きだったのに・・・。そこで、もう一つの選択肢である槍沢のババ平に変更。まあいいか・・・。

天狗池に写る槍ヶ岳
左に同じ

横尾尾根の北面には雪がたくさん残っていて、すでに日陰なので固くなっていた。ツルツル滑りながら天狗池まで下った。すでに日が陰っているので天狗池あたりは暗い。その暗さが幸いしてか、天狗池にはまだ明るい槍ヶ岳がクッキリと写っていた。天狗池あたりの紅葉はすでに終わり。そこから下って、槍ヶ岳へのメインルートと合流するあたりが見頃。全体的に見ると、涸沢よりも横尾谷よりも、槍沢の紅葉が質量ともに良かったような気がする。ババ平あたりまでずっとよかったので、ここを登るのがベストだったかな・・・と結果論。

テン場に着いたのは4時半頃。天気は下り坂のせいか、それほど寒くない。

■10月11日(水)   曇りのち雨   槍沢ババ平⇒横尾⇒上高地


きのうの晩は10時間寝続けたが、今晩は寝てから4時間で目が覚めてしまった。まだ12時にもなっていない。月夜だし、月見がてら用を足しに行った。ところが明け方になって雨が降り始める。下山するまで持って欲しいと思っていたが、こんなに早く降り出すとは・・・。この雨はいったんやんだ。


槍沢ババ平(7:40)⇒横尾(9:10)⇒上高地(11:50)

朝起きて晴れていれば、また槍沢を登って紅葉の綺麗なところまで行こうかと思っていた。しかし、この天気ではそれも無用。今日は見どころナシの下山のみとなってしまった。槍沢から上高地までは川沿いのほぼ平坦な道。あ〜だりぃ・・・。ま、テントの撤収の時に雨が上がってくれたのがせめてもの救い。

ババ平のテン場
天気は悪くても。視界はしっかりとあったのも救いだった。赤岩尾根と横尾尾根の紅葉を楽しみながら下山開始。槍沢沿いの紅葉も雰囲気ヨシ。それも一ノ俣の出合くらいまで。そのあとは単調な道をひたすら歩くのみ。

横尾に着くと人が10倍増。天下の槍ヶ岳でも、この時期は涸沢人気に圧倒されている。涸沢の紅葉は確かに素晴らしいと思うが、今回槍沢を通ってみて、槍沢も侮れないぞと。とはいっても、涸沢ブランドにはかなわないか・・・。
徳沢で休憩している間に、雨が本降りになってしまった。あと2時間というところだったのに・・・カッパを着るハメに。何年ぶりにザックカバーなんてしたかなあ・・・。雨が降るのに明神なんかでは休憩していられない。肩は痛かったが、ぶっ続けで上高地まで歩き切る。

穂高の主だったカールは全てトレースしたことになるのかな。一番ロケーションがいいのは涸沢。カールの規模、デキ、バックの岩峰など申し分なしだ。ただ、人が多すぎるのが難点だなあ・・・。そこで、ボク的に一番に上げたいのが横尾谷の左俣。暗くて狭い谷を登っていって、あのカールに飛び出した瞬間の開放感は言葉では言い表せない。途中には滝もあり、ルートを変えれば北穂池にも立ち寄れるバリエーションの豊富さは特筆に価する。フィナーレが北穂東稜ってのも面白いかも。来年あたりはその線でいこうかな。
クリックでルート図!



日本一の紅葉はどっち? − 大雪山と穂高岳 −

今年の夏は3ヶ月ほど北海道で山登りを楽しんだ。9月には大雪山の素晴らしい紅葉を堪能。そして今回は穂高の紅葉を。日本で一番の紅葉はどこか?といった時に上げられるこの2つのスポット。西の横綱「穂高」と東の横綱「大雪」と例えられる。今シーズンそのどちらにも行ってきたので、一言コメントするかな。

結論は引き分け!これじゃあコメントの意味がないかもしれないが、どっちも良かったから仕方がない。比較するにも、あまりにも山の作りが違いすぎて、比較にならないのだ。個人の好みもあるし、その年、時期の紅葉の出来栄えにも関係してくるし・・・。

大雪山は本州にはあり得ない、なだらかな作りの山。そのなだらかさ故に、紅葉する潅木の面積が広い。だから、広〜く一面紅葉という景観を味わえる。穂高なんかは一気に標高が高くなるので、その点では大雪に劣る。反面、標高がグッと上がって、バックに岩峰がそそり立つ景観は大雪山にはない。どっちが好みかで決まりそうだ。

ま、どっちが一番でも二番でもいい。どっちもきれいだから。




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