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天狗原山越え  小谷温泉〜妙高


総延長20キロ、13時間のロングツアーを楽しんで(苦しんで?)きました


下山の尾根上より 天狗原山(左)と金山(右)


 山域  頚城 天狗原山  
 行程  栃の木亭⇒天狗原山⇒杉野沢橋⇒妙高杉ノ原スキー場
 山行日時  2007年2月4日(土)
 天気  晴れ
 登山形態  山スキー(テレマーク)
 メンバー  U田、A野
 温泉  




小谷温泉の栃の木亭からスタートして天狗原山に登り、東斜面を滑って妙高杉ノ原までの約20キロのロングツアーに行ってきた。このツアーは2週間前に思い付く。三田原山から見た天狗原山と金山があまりにも白くて目が釘付けになった。一緒にいたA野氏と“あそこを滑りたい・・・”と話をしていたのが始まり。話が具体化し、小谷温泉から妙高への通り抜けで今日実現することになった。20キロのうち10キロがシールを付けての林道歩きで、下山したら夜8時だった。疲れた・・・。

小谷温泉 栃の木亭(6:50)⇒尾根(8:10)⇒1741m付近(10:20)⇒コル(11:25)⇒天狗原山(12:50〜13:25)⇒1849m付近(14:00)⇒杉野沢橋(15:50)⇒笹ヶ峰(18:00)⇒妙高杉ノ原スキー場(19:55)

本番前のお仕事として、まずは車の回送。下山口の妙高杉ノ原スキー場に車を置きに行かなければならない。3時に豊科に集合して、2台で妙高へと向かう。1台デポして日本海に出て、糸魚川から北上し小谷温泉に。前準備にかかった時間は3時間半。やれやれ・・・。

夜のうちに冬型は解消して、朝から絶好のツアー日和。強い冬型は一瞬で終わり、直前の積雪は小谷温泉あたりで20〜30センチくらいか。覚悟していたラッセルだが、幸運なことにトレースが・・・。長丁場の幸先ヨシ!予定より若干遅れの7時前出発。山頂13時を行くか戻るかのメドにしよう。

尾根に上がったところからの北アルプス
1741mの岩峰
ブナと樹氷と青空がきれい

トレースはどうやら二人分のようだ。何時ごろに出たのかなあ・・・?トレースは昨年取付いた場所を通り過ぎ、その一つ先の尾根から取付いていた。ところどころヤブっぽいが、概ね登りやすいルート。これが一番一般的なのかな。ヤブに関しては、今シーズンはヤブスキー続きで、免疫ができてしまっているのかもしれない。

かなりノッポの樹氷
1741mを越えると尾根は広くなる
樹氷ごしの北アルプス
トレースのおかげで順調に尾根に到達。昨年はガチガチの雪面にシールが効かず、かなり苦労したのだが・・・。尾根に上がってからもガチガチだったので、板をはずす場面が続出。今年は雪が軟らかくてトレースもあるので、かなり楽させてもらえそうだ。そのトレース、まったく無駄がなく、絶妙なライン取り。リピーターかプロの仕業に違いない。いつ先頭に追いつくのかなあ・・・とか考えながら歩いていたが、結局追いつくことなく山頂に着くことになる。

天狗原頂稜の南端
コルからは妙高山が
天気が良いのはいいことだ!

順調は順調なのだが、この尾根は一筋縄ではいかない。標高差は1200mそこそこなのだが、なにしろ距離があって複雑な尾根を辿る。もたついているわけではないが、時間だけは刻々と経過していく。ラッセルすることになっていたら、時間切れってことも考えられたかもしれない。改めてトレースに感謝感謝!

頂稜への登りの途中からの雨飾山
頂稜の一角が見えてきた

この天狗原山、スキーで滑るのに適した斜面ってのはほとんどない。逆に苦労する場面のほうが多いかもしれない。しかし、その苦労に余りある展望がここの魅力のひとつだ。尾根に上がるまでは背後の北アルプスの展望を楽しみ、尾根に上がってからはだんだんと姿を変えていく雨飾山が面白い。そして極めつけは山頂に着いてからの焼山と火打山。立派さはこの上なく、その近さにも驚く。まさに息を呑む景色とはこのことか・・・。この景色を見ることができるのは、山頂に到達した者のみというところが心憎い。

樹氷が美しい
山頂までもうちょっと
頂稜にできていたシュカブラ

最後の急登で2番手に追いつき、広大な頂稜に出たところで1番手が早くも滑り降りてきた。とうとう追いつかなかった・・・。ラッセルのお礼を言うと、“天気が良くてよかったですね”と清清しく滑り降りていった。素晴らしい人だ!山頂は無風快晴!いつまででも居たいくらいだが、先が長くて予想がつかないので、そうもゆっくりとはしていられない。2番手の人は松本の人だった。実は2週間前にも天狗原山にトライしていたが、もう少しのところでリタイアとのこと。途中の絶妙なルート取りはこの方の仕業であった。

天狗原山山頂からの金山
天狗原山山頂からの雨飾山

さて、行きますか!裏側へ。心配していた雪庇はほとんどなし。斜面を覗き込むが、地形図ほどの傾斜は感じない。あとでカシミールで確認したところ、上部の平均斜度は35度くらいだった。斜度もないけど雪もないのか、斜面はウネウネとしている。微妙な沢が埋まり切ってない感じだ。そうはいっても、豪雪のこの山の雪の量と白さは別格だ。新しい雪で雪崩の不安があったので、南東に伸びる尾根沿いに下りることも考えていたが、実際掘ってみるとかなり安定しているようだった。それなら山頂の東斜面を滑ろう!

天狗原山頂からの焼山と火打山
山頂からの滑り出し点

問題はこの斜面をどこまで滑るか。雪の量に不安がなければ、そのままずっと滑って金山谷に入り込むところだが、今年のこの少雪ぶりではリスクが高いだろうなあ・・・。谷に入って水流が出て身体極まり、泣く泣く尾根に這い上がる姿が想像できる。ただでさえ時間がないのだから、ここは考えられる一番の安全策を取るべきであろう。少し斜面を滑って、右の尾根に乗って、そのまま尾根伝いに下降するのが最善の策と考えた。最悪でも日暮れまでには林道に出なければいけない。林道なら暗くても安心だ。

ひと滑りして
まずは隊長A野氏から斜面に飛び込む。なかなか軽そうなしぶきを上げているぞ!もしやパウダー?続いてボク。オオッ!パウダーだ!・・・だが、ちょっと重くて深い。余分な力を加えると、埋まって前転してしまいそうだ。なでるように丁寧にターンしていくが、A野氏の待つ直前で前転してしまった。雪まみれ・・・。続いてU田氏。雪まみれになりながらも、気持ち良さそうだ。

そして2回戦目。ボクが先陣を切らせてもらう。調子よく滑るも、谷に阻まれストップ。これ以上下に降りると、右の尾根へトラバース不能となってしまう。まだまだ極上斜面は続いていたが、後ろ髪を引かれつつ尾根へとトラバース。このトラバースは北面になるので、すごいパフパフのパウダーだった。トラバースがままならないほど。ちなみに日当たりの良い南面はすでにバリバリか重重。

爽快な滑りは一瞬で終わり、早くも尾根を辿る下山モード。多少の斜度はあっても、雪が深くて重いので板が走らない。しっかりワックスかけてきたつもりなのだが・・・。トラバースもかなり下目でないと滑っていかない。尾根上を行ったり、トラバースしたりしながら、徐々に高度を下げていく。

少しだけ滑ってすぐにトラバース
北東尾根上から焼山を見る

左手には焼山と火打山、振り返ると滑ってきた天狗原山の斜面と金山が・・・。う〜ん、素晴らしい!止まるたびに写真を撮っていた。家に帰って写真を見たら、同じような写真ばかりであった。そして前方には目指す笹ヶ峰方面が・・・。気が遠くなるほど遠い。


北東尾根上からの天狗原山と金山
金山谷と滝ノ沢が出合うところまで伸びているこの尾根、アップダウンは少なく、心配したヤブも勢いは弱め。先々週(妙高山)の苦労が脳裏に浮かんだが、苦労しながらも順調に高度を下げていった。そうは言っても南面の重深雪には参ったなあ・・・。テレマーク特有(下手なだけだが)の前転し放題だった。

核心の尾根末端。左の金山沢、右の滝ノ沢とも滝マークや崖マーク。ここはA野氏の好判断でピンポイントで出合に降り付くことができた。
無事に沢に降り付き、右岸の河原を進むが、崖と水流に挟まれてしまった。川はまったくもって埋まってなく、徒渉点はなし。やむなくスキー靴でジャブジャブと徒渉。水量は多くないものの、ブーツの中はグチョグチョになってしまった。ごまかし程度でも対策をしてくるんだったと後悔・・・。ただ、このあとも足にそれほど冷たさを感じることはなくてよかった。不快指数はマックスだったが・・・。

徒渉・・・
徒渉を終え、岸に這い上がったところで、再びシールを付ける。ここからが長いシール歩きの始まりだ。終点の杉ノ原スキー場までの推定距離は11キロ。すでに3時を回っている。どこで暗くなるのかなあ・・・。でも、林道まではもう目と鼻の先の距離。安全圏に入った安心感があった。この徒渉までに暗くなってしまったら、もう行動不能。ビバークしなければならないところだった。

しばらくで杉野沢橋となり、ここから林道。気が遠くなる・・・。下山の林道はシャーッと滑って終わりというのが普通だが、今日はそうはいかない。池ノ峰を巻くまでの約10キロ弱はほとんど平坦か緩い登り。滑るなんてことは夢のまた夢。先のことは考えないことだな。仮に下っていたとしても、新雪が積もっているので、滑るなんてことは不可能だ。

笹ヶ峰で真っ暗に
ラッセル自体はせいぜいスネ程度で、それほどの労力はない。しかし、長い行動の最後の最後で、しかも長い長い林道。ラッセルはジャブとなって効いてくる。雪が軽ければ深いし、日当たりの良いところはバリバリの雪。だんだんと股関節と腰が痛くなってきた。

西の山に太陽が沈むと一気に暗くなり、星が出てきた。同時に気温も急下降。休憩していると、とたんに体が冷えてきた。笹ヶ峰で完全に明るさがなくなり、ヘッドランプを装着。林道でしかも雪が少ないので、迷う心配はないのがありがたい。池ノ峰を回り込み、そろそろ下りのはずなのに、なかなか下りにならない。下りになったと思ってシールをはずしたが、少しの間は平らなままだった。下りの幻覚を見たかな・・・。下りにかかってからはスキー場までは一気。やっと終わった・・・。

満月の月明かりの中、誰もいないスキー場を滑って下りる。太ももはやられていたが、奇妙な雰囲気のゲレンデ滑りは、なんだか楽しかった。そして、やっとデポしていた車に辿りつく。遅くなるのを予想して、国際側の駐車場に止めておいたのは大正解であった。さて、あとは風呂に入って・・・といきたいところだが、間抜けなことに栃の木亭に止めてきた車に、お風呂セットと靴を置いてきてしまったのだ・・・。風呂は我慢できたとしても、渡渉で濡れたスキーブーツを履いたまま家まで帰らなければいけない・・・。ううう・・・。

星空下山になったものの、なんとか2週間前に思い付いたこの長丁場をやっつけることができた。濡れたブーツの不快感と合わせて、完走の達成感が沸いてきた。メンバー2人に感謝感謝だ。その不快感と達成感をしのいだのが、帰りの車の眠気感であったのは言うまでもない。


GPSではないのでテキトーです

翌日は小谷温泉にデポしていた車を回収しにいかなければいけない。せっかく小谷温泉に行くのなら、そのまま帰るのではアホらしい。そこで、手軽に大渚山にでも登ってくる予定にしていた。自宅にはすでに明日の参加者であるT世さんとK野さんがいたのだが、遅くなって大変だろうと中止にしてくれた。ありがたや〜。で、眠いのに深夜まで宴会となったのである。




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