北鎌尾根から槍ヶ岳独標に向けて高度感満点のクライミング
2度目の北鎌尾根。前回は2005年に1人で行ってきましたが、今回はT世さんのリクエストで二人で行ってきました。まあ頭が悪いのか、前回のことなんて全く記憶にないですね〜。記憶にあったのは独標基部のトラバース開始のところと、トラバースが終わる残置シュリンゲのところだけかな。北鎌の稜線上なんて、前回どうルート取りしたかなんてさっぱり覚えていない。山頂直下の核心部さえ記憶なし。おかげで新鮮な気持ちでキタカマに臨むことができました。 ◆8月25日(土) 中房温泉⇒燕山荘⇒大天井ヒュッテ⇒天上沢 晴れ時々曇り前回に続き今回も貧乏沢からアプローチ。なんせ家から中房温泉が近いもんで。水俣乗越が楽で今は主流のようだけど、バスに乗ったり面倒だし、お金もかかるし。行程的にはかなり長くなってしまうけど、そのぶん表銀座を縦走できる。なんといっても帰りの東鎌尾根から天上沢越しの北鎌尾根を見ながら歩けるというのが最大のウリ。最後はヨレヨレでしたが・・・。
晴れるけど早めに雲が上がってくる・・・が数日続いていて、この3日間も同じような傾向のよう。午後に雲が出るのは仕方ないにしても、北鎌尾根上で雷雨だけはカンベンしてもらいたいところ。中房温泉の駐車場は案の定満杯で、登山道から2キロ近く下がった路肩にやっと止めることができた。山が流行るのはいいけど、駐車場のキャパ不足は深刻だな。便所も渋滞していたので、早めに来ないと予定の時間に出発できないかも。
初日は貧乏沢の下降以外は登山道。しっかりアルコールも背負って19キロの荷でスタート。今晩のうちにアルコールは全部消費するにしても、明日は水を持たないといけないからなあ・・・。同じくらいの重量になるでしょうね。登山口は黒山の人だかりだったけど、登り始めると登山道が渋滞するようなことはなかった。
燕山荘に到着。ところどころ雲はかかっていたけど、北アルプスはまずまずのお天気。燕岳はいつ来ても「いいなあ〜」と思う。大天井岳までの稜線も快適で好き。疲れた時の大下りの登り返しがキツイのと、大天井ヒュッテのトラバース道が意外と長くて疲れるのがタマニキズ。大天井ヒュッテのベンチには明日同じく北鎌に向かう夫婦?がいた。小屋泊まりのようで、明日は真っ暗なうちから出発するとのこと。大変だ・・・。
大天井ヒュッテからは15分ほどで貧乏沢の下降点。ここに古びた標識とピンクテープがぶら下がっている。よほどボケ〜っと歩いていない限り見落とすことはないでしょう。稜線を乗っ越す明瞭な踏み跡もあるし。で、その明瞭な踏み跡で稜線を乗り越すと、ハイマツ地獄に。ハイマツの枝に乗りながら越えると、ゴロゴロ帯の下りになる。あとは沢の真ん中を下ったり、左岸の踏み跡を辿ったり。
右から滝が合わさるとだいたい中間点。一日の終盤で疲れてきているので流水はありがたい。ところどころ鬱陶しい部分や踏み跡が不明瞭な部分が出てくるが、それほど難儀することなく下降することができる。ただ、こんなややこしい道は人によって所要時間に大きな差が出る。平均は2時間くらいみたい。
天上沢に降り立ったところを今日のお宿とした。前回と河原の形状が変わってる気が。前回の方が快適だった気がする。マキも少ないし。だいぶここで泊まってるな。まあ、盛大な焚火にするんでなければ、その程度のマキは確保できる。単独の男の人が貧乏沢から下ってきて、天上沢を上流へと向かって行った。酒飲んでメシ食って酒飲んで明日に備えて寝た、
岩向けの装備としては、ヘルメットのみという手もあったが、2人ということで万が一に備えて30mロープとハーネスとシュリンゲ少々を追加。ロープを使う場面はあまり想像できないけど、シュリンゲは一度だけお助けで使った。そういえば首から下げていたタオルもお助け代わりに使ったなあ・・・。装備はどれだけ揃えるか・・・。こればっかりはメンバーの技量などによるので、それに見合った装備を用意することになりますわね。 ◆8月26日(日) 天上沢⇒北鎌尾根⇒槍ヶ岳⇒殺生ヒュッテ くもり時々晴れ3時半起き。・・・だったかな?山で暗いうちからゴソゴソすることはほとんどないけど、今日は北鎌尾根縦走の日なので仕方ないですね。目標は5時出発。天気は快晴かな、今のところ。槍まで持ってくれればなあ・・・。ガスガスのキタカマはイヤじゃ。薄明るくなった頃に焚火に火を点け、そしてテントをたたむ。
天上沢の右岸をへつったりしながら上流に向かうと、しばらくで伏流する。こんなデカイ川が伏流するとはね。見落とすことはないと思いつつ、ちゃんと北鎌沢出合をチェックしながら進む。ケルンとかテン場跡とか前回の方がハッキリしていた気がするなあ。
15分ほど登ると二俣になる。右俣の入り口にはブッシュがあって、イマイチ貧相な感じがする。意識して登っていれば普通は見落とさないはず。ところが、左俣をだいぶ上まで登ってしまった・・・という年輩の男性が北鎌沢を下りてきた。右俣を登りはなおしたけど、疲れてしまってとても登れそうもないから、引き返してきたとのこと。思い込みとか色々あるからなあ・・・。そこを間違えるか!ってとこで、ボクも何度も間違えているしなあ。
水は右俣に入るところで汲んでおくのが妥当かな、。ボクらは天井沢に泊まっているので、出発時に水は背負ってました。少しくらい進んで汲んだって、たいして変わらないのでね。右俣の途中とかだいぶ上の方でもチョロチョロ流れていた。それをアテにするのは厳しいかな。でも、そのたびに喉を潤おすことができて貴重な水でした。北鎌沢はとにかく体力勝負。急傾斜なわりにはテクニカルな部分はない。 「右へ右へ」と丸暗記して登る人がいるみたいだけど、あまり考えずに本流を詰めていくと北鎌沢のコルに出ることができる。確かに2つ分岐があり、どちらも右に進路を取ると正解ではあります。どう見ても枝沢だろ・・・てところにペンキで×印がしてあった。右だからとこの枝沢に進入して、過去に遭難があったことから、やむなく×印をした・・・は大天井ヒュッテのお話。なんでもかんでも右右右と覚えてしまうと、こんなことになってしまうのでしょう。
コルはテント2張りかな。ちょっと臭う。天気さえ良ければ天狗の腰掛の方がテン場としては快適。ガシガシと小1時間登ると天狗の腰掛。ここから見る独標は威圧感がある。前を行く単独の人が見える。きのう天上沢で見た人とは別人だ。降りてきた年輩の方の話だと、前に単独2名がいるようだ。後ろには夕べ大天井ヒュッテに泊まっている2人がいるはずだ。
独標基部まで来ました。緑のビニール製のロープが張ってある。前に来た時よりも足場が悪くなった気がする。たくさん人が通るもんだから、落ちてしまったんでしょうね。通過には問題ナシです。しばらくスタスタと歩くと出っ張った岩のところ。くぐるように歩くか、一段下の足場を使うかで楽に通過可能。さらに歩くとフィックスロープのあるチムニーへ。ロープを引っ張ると固定してあるハーケンが動くもんで使うのを躊躇した。でも、使わないと荷が重くて登れない・・・。結局ロープに頼って登る。登り切ったところから高度感満点の快適クライミングで独標手前のコルへ。
前回は独標に寄らなかったので、今回は立ち寄る。往復10分もかからないくらいかな。肝心の天気は・・・ちょっと雲がかかり出してきた。ここからが北鎌尾根の本番なので、なんとかこの程度でご勘弁と・・・。ガスガスで視界がない中、北鎌尾根を歩いても意味ないですもんね。
ここから北鎌平までは「人の数だけルートがある」ような状況。一応予習はするのですが、信頼できる記録かどうかの判別が重要。ネットの記録なんかは、その人がたまたま辿ったルートの記録が書いてあるだけで、最良ルートがどこなのかはわからない。色々なルートを検証しながら何度も歩いた人が書いた記録なら信頼できそうですが・・・。ネットの記録は参考程度に見るべきでしょう。必要以上に警戒してしまったり、または逆のケースもありそう。
となると、信頼できない情報に頼らずに、自分が思うように進むべし。とにかく稜線通しを心掛ける。登るのが不可能な岩峰には、すぐに稜線に戻れそうな巻き道がたいてい付いたいた。それをひたすら繰り返すと北鎌平へと出るのです。稜線通しよりも巻いた方が楽だったところもあったでしょうが、、それは仕方ないですね。わからないんですから。大ハマりする可能性のある巻き道を使うよりも、最小限のハマりで抑えられる稜線通しが無難ということ。岩場が苦手な人の場合は難しい選択になるかもです。
前回わからなかった【諸君頑張れ】のプレートを今回は発見!槍は目の前だ。槍は雲がかかったり取れたりの繰り返し。北鎌平だと思っていた平坦地を一段登ると、本物の北鎌平。岩が積み重なったところをひたすら槍目指して登る。槍本体の基部に出ると、最後はクライミングっぽい感じに。荷が重いので厄介だったが、なんとかクリア。木の杭まで登ると山頂にいる人が見える。みつかってしまって恥ずかしかった。そこからはスタスタと山頂まで登ることができる。
槍ヶ岳の山頂はダダ混みでもないし、ガラガラでもない感じ。日曜の昼間というのはこんなもんか・・・?やっぱり若者が目立ちますね。「キタカマ」を知らない若者も多いでしょうね。二度目のキタカマということでとくに感慨もなく、20分ほどで下山にかかる。初めての時もとくに感慨はなかったか・・・。槍の山頂から辿ってきた北鎌尾根が雲で見えなかったのは残念だったなあ・・・。
肩の小屋は黒山の人だかり。テン場もそこそこのテントが張ってあった。それを尻目に殺生へと下る。殺生ヒュッテには休みでなければ知り合いのK志さんが働いている。いたいた、相変わらずだ。早速一杯やって、一段落したところでテントを張りに行く。槍の山頂にいる時には5張りしかなかったけど、いつの間にか増えて倍以上になっていた。小屋泊まりの人は少ないのにね。ここも例に漏れず若者多し。
さて、夕食グッズを持って再び小屋へ。自炊室で夕飯&宴会です。ちょうどその場に居合わせた単独男と若者カップルと、そしてK志さんと宴会開始!焼酎やら日本酒やらも入ってしまい、酔っぱらいになってしまった。翌日の朝のうちまで残ってしまうことに・・・。それでも、みなさんのおかげで楽しい夜となりました。 ◆8月27日(月) 殺生ヒュッテ⇒大天井ヒュッテ⇒燕山荘⇒中房温泉 晴れ時々くもり今日は中房温泉に降りるだけだけど、今日も長丁場。よって暗いうちに起きてゴソゴソし始める。今日も快晴!だんだんと明るくなり始め、槍の穂先に日が当たると赤く輝いた。たくさんあったテントは既にほとんどが撤収されていて跡形もない。みなさん早いなあ・・・。御来光狙いでしょうか。
出発前に小屋に立ち寄り、K志さんにあいさつして下山開始。下山とはいえ、燕山荘までは立派な縦走だ。気持ちが下山モードにならないようにしなければ・・・。槍の穂先はもちろん、大喰岳や南岳などにも日が当たって赤く染まっていた。穂高は要塞のようで威圧感たっぷり。朝の絶景を見ながら東鎌尾根を下った。北鎌尾根も見えるけど、角度がちょっと甘いなあ。
水俣乗越から西岳への登りが今日一番の試練。標高差200mほどだけど堪える。登りの途中で北鎌沢を下ってきた単独のおじさんに再開。向こうも覚えていたみたいでした。西岳に泊まったんでしょうね。きつい登りだったけど、朝のうちは日陰でありがたかった。
2005年の時は西岳に泊まって、朝のうちに赤沢山と西岳に登ってきた。もちろん今日は登りません。西岳まで雲ひとつなかったのに、このあたりから少しずつ雲が出始める。この3日はずっと同じような感じだったってことだな。北鎌尾根がちょうど真正面になる赤岩岳あたりでは、槍の穂先と独標に刺さるように雲が出た。主役の2つがこうではねぇ〜。学生風の6人組と前後しながら歩いていた。
大天井ヒュッテから切通し岩までのトラバース道、これがキツイというかダルイというか。トラバース道とはいえ結構登りも多いしなあ。そして最後の試練が大下りの登り返し。足にはくるけど、こっちの方が登りに没頭できて気持ち的には楽かな。ただ、ゴールが近付くにつれて近くのものが遠くに感じられるようになってきた。
燕山荘でガマンし切れずにビールを飲む。ウマい。下りはヨレヨレ気味のT世さんと別々に降りる。先に降りて車を回収してこようという魂胆。平日の午後なので、わりとスムーズに下ることができた。中房温泉から車を止めた場所まで、早足で歩いたけど15分くらいはかかったかなあ・・・。車を第1駐車場まで上げて待機。しばらくで電話が鳴って登山口のロータリーまでお迎えに上がって、おしまい。
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