高瀬川 七倉沢(途中まで)


ズタズタの雪渓と落石が怖く約1950mまでで引き返す・・・



 山域  北アルプス 高瀬川 七倉沢
 山行日時  2014年9月13日(土)
 登山形態  沢登り
 天気  晴れ時々くもり
 メンバー  M坂、Y澤
 温泉・メシ  なし
 コースタイム 七倉(6:15)⇒二俣(6:45)⇒2条8m滝上(6:50〜7:00)⇒約1400m(8:10〜20)⇒雪渓手前(9:20〜40)⇒約1950m引き返し点(10:30〜50)⇒雪渓手前(11:40〜50)⇒七倉(14:55)

6月に今年の沢慣らしとして七倉沢を使いました。沢慣らしは下流の方だけだったんですが、せっかくなので稜線まで詰めてみようかという話に。ただ、この山域特有の崩落の激しさが懸念材料。気休めにしかならないかとも思ったけど、8月に稜線からも覗いてみました。七倉乗越への最後の詰めは問題なさそうだったけど、その下がねえ…。雪渓と落石が…。

今回付き合ってくれたのはM坂氏とY澤氏。雪渓と落石は心配だけど、上から見ただけでは判断付きません。実際に見てみないと…ということで、七倉沢決行であります。アプローチが極楽にもかかわらず記録がほとんどないというのには理由があるんだろうなあ…。撤退用にロープ2本と捨て縄数本は準備しておきます。

 
船窪小屋への登山口からスタート 入渓してすぐに感じの良いナメ滝

七倉に6時集合。すでに満車。盆でも止めれたのに…。8月から週末全部天気悪くて、久しぶりに予報の良い週末。しかも3連休。ストレス溜まった登山者が押し寄せたと思われます。七倉でコレだから、人気の山の登山口はえらいことかも。たまたまY澤氏の前が少し空いており、軽の利を生かして駐車完了!登山口にはTOKI&ASCのM野君御一行、MAKIちゃん&ASK、タッキーチームも。上で会えれば…

 
下流の渓相はいいです! 3mCS滝は右から高巻き
 
ナメ滝と釜の連続 二俣を右に入ると・・・

船窪小屋への登山道が川から離れるところから踏み跡を直進。かなり明瞭な踏み跡が続いています。堰堤を越えてさらに踏み跡を進み、右岸が狭くなるあたりで川に入ります。水の好きな人はとっとと入りましょう!沢慣らしの時は色々と手間ヒマかけて進みましたが、今日はここらへんは時間優先。無駄なことは一切せずに進みます。沢慣らしでは二俣先の8m2条滝(下の写真)まで2時間半かけましたが、今日はわずか30分で通過。

 
8m2条滝  2条というよりインゼル 滝上もナメ床が発達

8月から週末は悪天オンパレードでしたが、今日は久々のスッキリした天気。沢登りには勿体ないくらいの天気です。そうは言っても晴れるにこしたことはないです。谷からは狭い空しか見えませんが、青空はキレイだし、太陽を浴びる山の緑も映えています。8m2条滝から先は未知の世界。どんな難敵が待っていることやら…。

 
ナメ滝がいい感じです 支流の25m滝

ナメ床、ゴーロと比較的穏やかに経過します。かといって、間延びする感じでもなく…。かなり広い河原もあり、快適なテン場もありました。ここで泊まっての沢慣らしも悪くないなと思いました。ま、ただの宴会ですけど…。この穏やかなまま稜線まで…と淡い期待をしますが、そうは問屋が卸してはくれませんね。左から支流が滝で出合うあたりから滝場が始まります。


2段5m滝


8m滝の下段にあたるトイ状

最初の本格的な滝は8m滝(下の写真)。斜めに架かる急な滑り台という感じ。右壁を難なく登れるかと思いきや、最初に登ったM坂氏は上の方で苦労している模様。なるほど取り付いてみたら見た目より手足は少なく、抜け口はツルツルのスラブでした。上からロープ張ってもらって、振り子で抜けました。M坂氏のラバーソールは調子良さそうです。


8m滝  上部が悪く振り子トラバース


3m滝

快適に小滝を越えていくと、次に立ちはだかるは10m滝(下の写真)。流れに近いところを登るのは不可能で、左壁に活路を見出します。細いガレルンゼ沿いに登るとテラス状になり、そのままトラバースで落ち口へ。一件落着かと思ったら、すぐ上にトイ状のナメ滝(2つ下の写真)が続いています。これ単体だったら楽しいけど、落ちたら下の10m滝の下まで…なので慎重に。M坂氏がロープ引いて行ってくれました。怖いのは水流を渡る部分。ここも振り子で対岸へ。対岸に渡ればスタスタと歩けました。


10m滝  右壁を登り上部をトラバースして落ち口へ


10m滝の上はトイ状のナメ滝


滝連続区間


8m滝はヌルヌルでフリクション大会

ツルツルの滝をフリクションギリギリで登る滝(上の写真)を楽しむと、右からスダレ状のキレイな滝で支流が出合います。本流には黒い滝。フェイス状の8mくらいの滝(下の写真)です。一見ツルッとしてるように見えましたが、左壁にバンドが走っていて、それを利用して登ることができました。


巨岩!


8mフェイス状滝

今日はM坂氏が大活躍…というか、M坂氏にオンブにダッコ状態。沢に入った時に『今日はトップで行かせてくれ』と進言してきました。そんなもんで余計にオンブにダッコ。登るのもM坂氏が一番上手に登るし、靴もアクアだし。ワタクシは最後尾から写真撮影と記録録りに専念しておりました。先頭歩くと写真撮っても人物が入らないし、記録も疎かになりそうでよかったです。


稜線はまだまだ遠い

このあたりの沢はほぼ直線。ずっと遠くですが稜線が見えています。七倉岳と七倉乗越の間の稜線かな。しばらくは平凡な渓相が続きます。次なるアトラクションは8mの滝(下の写真)。水流がきれいに一条で落ちる、滝といえばこんな感じかな…という滝です。ツルツルに磨かれていて手が付けられません。少し戻った右のリッジ状に取り付き、落ち口までトラバース。最後のトラバースがちょっといやらし目でした。


8m1条の滝  右から小さく巻きます


谷が深くなってきました

気が付くと側壁の樹林は後退し岩ににってます。景観としてはいいけど、沢の難易度が上がっていきます。8m1条の滝のすぐ上には5mの滝が2つ連続します(下の写真)。小さな釜を持っていて、取り付きが少しかぶっています。岩に取り付くまでは人間を足場に。なんとかかんとか2人上げることができました。…が、最後のワタクシは取り残される格好になってしまいます。何とか上から工作して…と期待しますが、滝の形的に無理っぽい。


5m+5m滝  前の2人はヒザで登り最後のボクは左から高巻き


5m+5mの2段目を登るY澤君

幸いにも左の上部が台地状になっていて、台地まで上がれば落ち口までは行けそう。台地までの2〜3歩が悪い。ぬめってて外傾してて…。ツルンといきそうで…。ここを何とかしないと抜けれないので思い切って次の一歩を!結構大丈夫でした。滝上に行くとY澤氏が2段目の滝で奮闘中。一度、背中から落ちたけど、ザックがクッションになってホッ…。巻き結びの結び目を握ってしまったようです。高いけどやっぱり器具が安心かな。


ガレが谷を埋め尽くしています

この滝の上は大量のガレが堆積しており、水流も伏流してしまいました。このガレが堆積した景観も壮大でした。谷はV字のはずだけど、大量のガレによって結構な幅で平坦になっています。上部では相当に崩落が激しいんでしょうな。ビショ濡れになったY澤氏ですが、このガレ区間で体が温まったことでしょう。温まったを通り越して暑くなってのでは…。ワタクシも額からの汗がメガネに落ちて不快。


前方に雪渓が!


変に残ってますね・・・

前方に見たくないものが見えてきました…。いよいよ雪渓の登場です。8月に上から下見した時に雪渓は確認済。七倉沢は下流の二俣を過ぎると目立った支流はなく、最後のゴルジュを抜けると扇状に広がります。上から見て扇状が狭まるところに大きな雪渓がありました。実際に行ってみると、見えていた雪渓よりもだいぶ下流から雪渓が始まります。しかも嫌らしい残り方で…。


しばらくで全面雪渓に

最初の雪渓は既に天井は落ちていて、両サイドが被った状態で残っています。花道みたいな感じですが、間違っても間は通れません。左側の雪渓と地面のコンタクトラインを進みます。次の雪渓は完全に谷を覆っています。薄くなったところを踏まないようにだけ気を付けます。雪なので滑るけど、不安定なガレよりはずっとマシ。行程もはかどります。


・・・と思ったら穴が

このまま谷を完全に覆う雪渓が続いてくれればいいんですが、やぱり出てきました…ズタズタの雪渓が…。上も下も無理なので、ここも左側のコンタクトラインを進みます。雪が融けて間もない場所なので、ガレの状態が非常に不安定です。傾斜はそれほどでもないけど、蟻地獄状態で登ります。谷は徐々に右カーブしていきます。右カーブの先が七倉乗越ですが、ここからが更にひどい状況に。


雪渓の隙間を縫って進みます


不安定なガレを進みます

一見すると雪渓は終わったかと勘違いします。雪渓の上に大量の落石が積もり、地面に見えているだけでした。ところどころに穴が開いているので、そこが雪渓だとわかるのであります。稜線からは雪には見えてなかったと思われます。さらに七倉岳山頂の方向からはひっきりなしに小石が…。春先のドロドロ雪崩のように、ザーッとまとまって流れてきます。さらには、あちらこちらで奇音が…。雪が割れる音のようで、狭い谷に響き渡ります。


雪渓の上に落石が積もっています  右奥が七倉乗越

M坂氏はなんとか進もうと奮闘しますが、蟻地獄状態のガレザレを登れません。仮に進めたとしても、七倉岳方面からの落石の間隙を縫ってその先に進み、落石が積もり穴の開いた雪渓を越えなければなりません。この先さらに谷は狭くなるので、落石があったら逃げ場はナシ…。空爆と地雷の挟み撃ちです。『M坂君、帰ろうか…』と声を掛けました。


もう無理か・・・

悪い残り方をした雪渓が現れた時点で、引き返すことを意識し始めたのですが、ここまで来てしまったのは引っ張り過ぎだったかな…。ちょっと反省。あとは何とかして下降しないと。蟻地獄は登るも大変だけど、下るのはさらに大変。ガレと一緒に滑り下りる感じ。転がらないように中止し、滑るように…。脆い岩盤のところは岩を支点に懸垂でクリア。一番悪かったところは越えてひと安心。


撤退です

少し斜度が落ちて歩きやすくなりましたが、まだまだ油断は禁物。雪渓が全部終わってからひと休みしましょう。ほぼ登ってきた通りに下ります。雪渓の上を歩くところでは、下りは転びまくり。天井のない雪渓を抜け、大量のガレが堆積したところまで来て、やっと少し安全地帯に辿り着きました。ここで小休止。時間はたっぷりあるので、精神的には楽でした。


撤退を想定してロープ2本持って来ててよかった

雪渓と落石の恐怖からは解放されましたが、ここからは頑張って登ってきた滝を降りなければいけません。撤退は想定済みでロープ2本と捨て縄は装備してました。でも、こんなにたくさん滝があるとは思ってなかったなあ…。大き目の滝はほとんど懸垂下降。上の方は樹林が近くまで来てないので、岩やら倒木やらを支点にします。


懸垂下降8回(以上?)でした

登る時には気付かなかったんですが、懸垂用の支点がいくつか残されていました。降りたい場所はみな同じということで。登る人はいるけど、稜線に抜けれずに下降する人も多いみたい。10m+トイが続くところでは、左岸の灌木からロープが残置してありました。恐らくロープ1本しか持ってなくて、回収不可能な形で懸垂して残置となったんでしょう。


水に入るのが好きなM坂氏


下降も沢を楽しんだということにしておきましょう!


無事下山!・・・で何より
覚えているだけで8回の懸垂下降の末にやっと帰還です。メンバーによってはプラス2〜3回は必要になるかも。一つのルートでやった懸垂の数は過去最高でしょうな!予定通りの沢下降なら、こんなに懸垂する沢を選びませんし。撤退以外にはありえませんね。おかげで楽しめました。稜線まで抜けれなかったのは残念でしたけど、抜けると長い長い登山道歩きが待っています。下りも楽しめたと考えると、これはこれで良かったのかな…と。ま、無事に降りたから言えるんですけど…。

 
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