親不知まで歩き切るも靴擦れのあまりの痛みに到着の感動はなし・・・。
9月1日(火) 天気: くもり一時雨 | ||
栂海山荘(5:35発)⇒菊石山(6:53〜7:05)⇒白鳥山(8:43〜9:05)⇒シキ割の水場(9:57〜10:07)⇒坂田峠(10:46〜11:00)⇒車道(12:13〜30)⇒国道8号線(13:53)⇒親不知海岸(16:08着) | ||
今日から9月。そして全山縦走の最後の日となった。外は小粒の雨がシャーシャーと降っている。この山行の最後の日にふさわしい天気だ。最後の日は雨の中を歩くのも、天候に恵まれなかった今年の夏を象徴していていいかも。バンドエイドは残り11枚。最後なので全部貼って靴を履く。靴は中敷を出して干しておいたが、小屋の中では全く乾いていなかった。 霧雨の中を歩き出す。霧雨といってもかなり強い霧雨だ。歩き出しは下山モードでだるかった。しかし、いつの間にかこの40日間を回想するようになり、登ったのか下ったのかもわからなくなるほどはまってしまった。今朝の時点では、下山したら家に帰りたい気分だったが、今はもう親不知に泊まるほうに傾いていた。なんだか身も心も軽かった。 菊石山を下って1241mピークあたりから蚊が出だして、2つ3つと刺された。ふと気付くと、足元をウヨウヨと飛んでいるものが全て蚊だということに気付く。すごい数で、パッと腕を見ると5匹以上の蚊が止まっていた。腕を振っても逃げないので、叩くしかない。一度に4匹もつぶした時もあった。左ひじはもう刺されて膨れている部分の方が多いくらいだった。暑かったが背に腹は変えられない、上下ともカッパを着て、フードもしっかりした。白鳥山に近づき、樹林が低くなると蚊はいなくなった。このまま海までこんな状態だったらどうしようと、マジで思っていたのでホッとした。 白鳥山の山頂には小屋があった。こっちのほうが新しいだけあってきれいだ。天気は少し回復し、薄日も差すようになった。下るとまた蚊地獄かと心配したが、大丈夫だった。そのかわり、この下りから靴ズレが痛み始める。早くもバンドエイドがはがれてきたのか・・・。 シキ割の水場で水補給。高度計の表示はとうとう1000mを切ってしまった。靴ズレは登ったあと下りになる時が一番痛かった。また平坦なところでも歩幅を小さくしないと痛くて歩けない。飛ばせる道を抑えて歩かなければいけないのはせつなかった。見晴らしの利きそうなところもあったが、霧が出ていて真っ白。しかし、どこからか車の音が聞こえてくるようになってきた。ミンミンゼミも鳴いている。 坂田峠でひと休み。ここは東西に旧北陸道が通っていて、お地蔵さんもいた。また雨が降ってきた。ここには下界と同じハエもいた。ここから先は足が痛くてコースタイムを軽くオーバー。とくに左足がひどい。あと2時間くらいもってくれれば、あとはどうなってもいい。鉄塔の切り開きから海が見えた。まだだいぶ遠かった。休憩すると、次の歩き出しで足に激痛が来るので、極力休まないようにする。 栂海新道がアスファルトの車道と交差しているところで最後の休憩。あと1ピッチで終点を迎える。しかし感動に浸っていられるような足の状態ではなかった。ゴールに着きたいという気持ちよりも、早く靴を脱ぎたい、靴を脱げるところまで行きたいという思いで一杯だった。入道山はアップダウンが多くて曲者だった。400mくらいまで下ってきたのに、まだ登りがあるというのか・・・。最後の下りは黄色い粘土のような泥でよく滑る。高速道路だか8号線だかを走る車の音がだんだん大きくなってきた。そしてヒョッコリと8号線に出た。登山道は終わった。 降りたところはちょうど駐車帯になっていて、そこの縁石に腰を下ろした。一番に靴を脱ぐ。予想通りバンドエイドは全部はがれていた。そして足のほうは、この世のものではないというか、人間の足とは思えない足だった。赤とピンクがほとんどを占めていた。ふやけ方が半端ではなく、そのシワは気持ちの悪い生き物のようだった。1時間くらい縁石に座ったままボーっとしていた。 少し落ち着き、道路の向かいにある親不知ホテルの売店に行く。しばらく山に入っていたためか、国道を渡るのが恐かった。スピード感覚が鈍っているようだった。ホテルの前には生ビールののぼり。それに引かれて入ることにする。いくらなんでも臭いだろうから、便所で手と顔を洗い、上半身だけタオルでふいておいた。 食堂に入り、生ビールとカツカレーを注文。注文を取りに来てくれたおばちゃんは、ボクの足を見て目をむいていた。気を遣ってくれて、風呂に入って駅まで送ってもらえばいいと言ってくれた。でも、今日は海に泊まりたい、そして駅までの1時間は歩きますと断った。早く海に降りたかったが、足が乾くまでは砂浜はヤバイかと思い、しばらくゆっくりさせてもらった。
荷物を背負い、海への遊歩道を下る。この海岸はとても快適にはテントを張れるようなところではなかった。仕方なくまた登り、国道を駅のほうへと歩き出す。国道は狭い洞門が多く、歩いていて恐かった。高速の下が船置き場になっているところに行くと、なんとか張れそうだったので、ここを最後の夜に決めた。最後のテントを張る。雨が降ってきたが、高速の下なので雨は当たらない。そのかわりに車の騒音が激しい。また高速からタレ落ちてくる水が、ジャージャーとうるさかった。 最後の夜はアルファ米だが一応赤飯。胃がむかついており、少ししか食べれなかった。食べたあとは体がだるくなり、しばらく横になっていた。気分も悪くなり外に出た。すると急に吐き気が襲い、胃の中のものを全て吐いたような・・・。吐くと気分が良くなり、冷や汗も引いた。なんだったんだろう・・・?40日くらい揚げ物を口にしていないところに、いきなりカツカレーの油ギトギトのカツを食べたせいかもしれない。とんだ最後の夕食になってしまった。 最後の夜であった。 |
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⇒ 親不知の海岸〜親不知駅 |
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